【読解をしよう!⑧】世の中の文章は、悪意に満ちている。言葉に注目して読解力を付けよう!

日本の国語教育では、頻繁に読解力という言葉が登場します。

読解力を付けなさい、読解力が足りない、などと言われますが、読解力とは何かをしっかりと定義して話をする先生はあまりませんし、読解力を付けるノウハウについても手探りなのではないかと思いまして、私の少ない経験値ではありますが、シリーズとして書いています。

それが、この読解をしようシリーズです。
 
 
前回は、本文を読む前にすべきことがあるということで、国語の現代文を題材に取り出しましたが、今日はその続きです。
 
前回の記事はこちら↓

今回は、言葉の選び方について

僕は元々理系ですが、東大に文系でも合格したということで、理系科目を教えるのと同じくらい、文系科目を教えています。
 
2時間の授業で、数学を教えて、英語を教えて、国語を教えて、日本史を教えて・・・のようなことが普通で、他科目指導の経験も長くなってきたのですが、実は国語の読解の授業は評判が良いです。
 
物凄く細かいですし、僕が読めるのではなくて、「なぜそう読めているか」の理由やノウハウを必ず付け加えるようにしてますから、生徒も納得してくれているようです。
 
 
その中でも、特に面白がってくれるのが「言葉の選び方」
 
これは、あまり他の先生が解説しているところを見た事がないんですが、絶対に注目した方が良いポイントだと思いますので、簡単にご紹介です。
 

実際の問題を見てみよう

さて、前回の記事と同じように、2017年の国語のセンター試験の問題を貼り付けましょう。
 
※長いので、特に読む必要はありません。参考に貼り付けただけです。
 

 

さて、前回の記事で。リード文に注目すべきだと言いましたが、今回のリード文を読むと「科学論」であると書かれています。

これも前回に書きましたが、国語の現代文の題材になるような文章では、「科学」は大抵悪者扱いされます

科学のせいで自然が失われたとか、希薄な人間関係になったとか、戦争が起きたとか、格差が生まれたとか、現代社会の問題は全て科学のせいだと言わんばかりに(それは言い過ぎか)。

多分、学者さんにそういう考えの人が多いのでしょうね。

 

もちろん、科学を賛美する文章が出る可能性もありますが、まずは「科学」という言葉を見た瞬間に、「あ~、この筆者は、多分科学がキライなんだろうな~」と思って、読み進めても構わないでしょうね。

それくらい、いつも悪者です。

評論文の特質

というのも、

評論文というのは、ナンでもカンでも二元論に単純化して語られます

本当は、絶対に良いものや絶対に悪いものはないはずなんですが、短い文章で主張を通そうとすると、どうしても正義の味方と悪者を登場させて戦わせた方が、読んでいる人が分かりやすくなる、というのも大きな理由でしょうね。

 

上の例で言えば、自然環境は善で、それを破壊する科学技術は悪、みたいな感じです。

他のテーマでも同じで、良い者と悪者が登場する文章はとても多い。

だから、この文章を書いた人は、

何が好きで何が嫌いなのか、見極める事が非常に重要なのです。

実際に問題を見てみよう

という視点を踏まえた上で、センター試験の国語の文章を見てみましょう。

例えば、1行目。

「現代社会は科学技術に依存した社会である。」

とありますね。

この時点で、もうこの筆者は、どちらかと言うと科学の事が嫌いな可能性が高いと読み取れます。

なぜなら「依存」という言葉は、比較的ネガティブな印象を持つ言葉だからです。

 

もし、筆者が科学技術の事を好きで、現代社会の事を素晴らしいと思っているなら、

「現代社会に対して、科学技術は大きな“貢献”をしている」

とか、

「現代社会は、科学技術の“お蔭”で成り立っている」

のような表現になってもおかしくないわけですから。

 

まあ、1行目はそれほど露骨ではないですけどね。もう少し読み進めてみましょう。

4行目「既存の知識の改定と“拡大”のみを生業と・・・」

5行目「科学は技術的な“威力”と結びつく・・・」

7行目「科学技術という営みの存在は、“膨張”を続ける。」

14行目「実験室の中に天然では生じない条件を作り出し、そのもとでさまざまな人工物を作り出すなど、自然に“介入”し・・・」

 

などなど。

特に悪意を感じる表現には、「“---”」のマークを付けましたが、文全体を読んでも何となく科学に悪い印象を持つような表現になっています。

言葉の印象には、筆者の趣味が表れている

細かいと言われれば細かいのかもしれませんが、こういう日本語の表現を見れば、簡単に筆者の趣味が分かります。

 

僕もブロガーのはしくれですので、文章を書く側の人間なわけですが、文章を書くときって絶対にこういうのを意識してしまいます。

好きなものに、印象の悪い言葉は使わないでしょうし、嫌いなものに印象の良い言葉を使いません。使ったとしたら、そこに別の意図があるのです。

 

言葉が持つ印象も、読解の重要な手がかりです。

 

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