2021年 東大数学 文系第1問 解説(円と3次関数)

2021年 東大数学 文系第1問の解説

円と3次関数が登場!

円と3次関数が登場し、6個の共有点を持つ条件を求めよ、という問題。

数学ⅡBまでで、座標上に円と絡む図形って、点、直線、円くらいのもので、放物線と絡むのも中々珍しいと思います。
そこをなんと、3次関数と絡ませる。
こんな問題、見たことあったかな?と思う新設定の問題です。

普通に考えたら、円と3次関数を連立して6個の解を持つ条件を考えるんですが、
その際に、3次の式を円に代入するってことで、6次方程式が出てくる。
「いや、6次方程式って!」
と思って、ためらうと思いますが、そこをどう処理するか!?
他の解法はないのか?

その辺りを、深堀ってみましょう。

この問題の手書きの解答の画像一覧を張っておきます。
ダウンロードや、ご自身の学習、先生方の授業での使用などは自由になさってください。(授業で使用する際は、敬天塾のものであると告知するようにしてください。)
無断での販売はご遠慮ください。
2021(1)文数 解説

解法を21個発見

いつも通り、私の手書きの解説をご披露するのですが、過去最高の8枚に渡りました。その理由は、解法がたくさん見つかったから。

その数なんと、21通り。
(通し番号では19個になってますが、実際は解法4と5が2つに分かれるため、21個になります。)

中には、途中で計算が激しすぎて挫折し、解けなかったものも含まれるので、実際に答えに辿り着くのは16個くらいだと思うですが(ということで、少し水増ししてますw)

まずは、解法の分岐の仕方をまとめたものをご覧ください。

東大では、新傾向の問題が出題される。だから、様々なパターンを想定しておけ!

では、なぜそんなことをしたかというと、
「東大が(特に文系で)、新傾向の問題や、見たことのない設定の問題を出題してくるから」です。

2019年までは、僕のレベルでも、見た瞬間に最後の方まで解法がイメージできる問題が出題されてました。
しかし、2020年、2021年の2年分は、初見で見抜ける問題はなく、少し手を動かして、解法を探る問題が多く出題されています。
仮説ですが、東大は、パターンで対応できる問題をあえて避け、考察や実験を行うことで解法を導きだす問題を狙って出題しているのだと思います。
(ちなみに、この傾向は、2019年以前にも見られ、特に最近その傾向が強くなっているように思います。)

とすると、過去問の分析も「解ける方法を学んで終わり」で済ませるのではなく、ちょっとパターンを変更させられても対応できるように備えることが重要。
ということで、21個の中には決しておススメではない解法もたくさん含まれていますが、あえてその分岐のパターンや立式の仕方を知っておくことで、来年以降の対策にしていただきたく存じます。

解法1:円と3次関数を連立し、yを消去。xの6次方程式へ

では、解法に行きましょう。
まずは一つ目にして、最もおススメな、xの6次方程式に持ち込む方法です。

臆すること勿れ。進め、進め、進め!
の掛け声とともに、強引に連立して、6次方程式をつくります。

円が偶関数(というか、y軸対称)、3次関数が奇関数ということもあり、
xの6次方程式ではありますが、xの偶数乗しか登場しない、6次方程式になります。

そこで、xの2乗をXで置換すれば、Xの3次関数に。
この時、X>0でないと、xの解が2つ登場しないことに注意してください。
ということで、Xの3次方程式がX>0の範囲に3つ解を持つ範囲を求めます。

3解持つ条件について、思い付きやすく簡単なのは、極値が逆符号でしょう。
極大値>0 かつ 極小値<0 となれば、X軸と3回交わります。

あとは、増減表を見ながら、X>0に解を持つかどうかを確かめれば、Okです。

では、手書きの解説をどうぞ。

 

解法2:円と3次関数を連立し、xを消去。yの6次方程式へ

つぎの解法は、さっきのとほぼ同じ。xとyを交換しただけです。
さっきはyを消去しましたが、今度はxを消去。yを残して、yの6次方程式に持ち込みます。

連立して代入するところで、一度3次関数を2乗する必要があるため、1手だけ作業が増えますが、後の流れや解法はほぼ同じです。

では何が違うかというと、単純に計算量。
正直言って、短い試験時間内に答えが出るような計算量ではないと思います。かなり大変です。

但し、方針が正しいので、頑張れば解けてしまいます。
実は、計算ミスをしまくって、3月の時点で挫折したため、放置に放置し、半年後にやっと計算が当たりました笑
僕はあまり計算ミスしないんですが(その代わり、解くの遅い)、ミスが連発して精神的にヤラれるくらい激しかったです。

その努力の様子を見せられないのが心苦しい(というか、頑張りを認めてほしいだけ笑)のですが、解説をどうぞ。

(下の画像の左半分です。)

 

ちなみに、解法3として、xとyを両方残し、(x、y)の組が6個になる場合を検討するという方針も考えられたのですが、
私に力不足が原因で、どのように持っていけばよいかわからなかったので、断念しています。

閑話休題:再現答案を見たところ・・・

余談です。
敬天塾では再現答案を回収し分析しているのですが、多くの答案で
そもそも解法の方針を間違えてしまい、ほぼ0点(と予想される点)になっていました。

この画像のように、極値と円のy座標の大小を比較する方針が誤答です。
なぜ違うかというと、極値がハミ出るかどうかではなく、円と3次関数が接するかどうかで、共有点の個数が変わるからです。

例えば、放物線と直線の共有点の個数を考えてみましょう。接するかどうかで、0個~2個と変わりますね。
円と直線もそうです。接するかどうかで、0~2個で変わります。
円と円、3次関数と直線など、組み合わせを変えても、接するかどうかで共有点の個数が変わるはずです。

確かに、3次関数の極値を使って、共有点の個数をカウントするパターンの問題もあるのですが、それは「x軸や、y=kなどx軸と平行な直線」との比較の場合だけです。
3次関数の極値が0となったときは、x軸と接しています。つまり、やはりこれも接しているかどうかで、共有点の個数を場合分けしているのです。

ということで、この誤答のように、3次関数の極値と円上の点を比較するとNGなのです。(接するかどうかで場合分けをすることにならないからです)

では、「円と3次関数が接する」という条件の下で、解法を考えてみると、どうなるでしょう。
これが、解法4~19の大きな方針です。

※なお、円と3次関数が接する場合を検討して、aの値を求めるという方針は、ただ数式を書くのみではなく、「なぜ接する場合を検討すれば、共有点が6個の場合を検討できるのか」を日本語で記述して補足することが重要となり、うまく書けなかったり、ちょっとした論理のミスが生まれてしまったりすると、減点対象となってしまうことが考えられるため、
今回の問題では、あまりお勧めしておりません。

解法4~5:円と3次関数を連立して、重解を持つ条件を求める

では、まずは解法4と5です。
これは、解法1や2と同様に、円と3次関数を連立するのですが、
解法1~2では解が6個になる条件を求めたのに対し、
解法4~5では、重解を持つ条件に持ち込みます。
その際、対称性を用いて、やはりx^2=Xなどとおき、Xが重解を持つ条件を求めることになります。

「3次関数が重解になる条件」というテーマで解法を体系的にならうことは少ないと思いますが、
主に2つあると考えています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【3次方程式が重解になる条件】

①極値が0になる(つまり、3次関数がx軸と接する)
②3つの解をα、α、βとおいて、解と係数の関係を立式する

注)
もし3次方程式において、たまたま解が見つかり因数定理に持ち込めた場合は、上の2つは使わないことが一般的だと思います。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これに、xを残すか、yを残すかを組み合わせると、解法が2×2=4通り出現するということになります。

ただし、xを残すにせよ、yを残すにせよ、「①極値が0になる」を使うと、解法1~2とほとんど同じになってしまう場合、今回は通し番号に含めていません。
(別の解法だという立場をとると、19個から21個に増えます)

②のように解と係数の関係を使うと、解法1~2と同様に、xを残した場合は解けるレベルの計算に落ち着きますが(それでも結構大変)、yを残すと私の力では解ききれない面倒くささになってしまいました。
どなたか解けたという方は、教えてください。

では、手書きの解答をどうぞ。

解法6~19の概要

では、解法6以降です。
まず共通しているのは、解法4~5と同様、円と3次関数が接する場合を検討しているということです。

何が違うかというと、解法4~5は方程式に持ち込んでいたのに対し、解法6以降は、やや図形的な処理を利用する点です。
例えば解法6は、3次関数上から引いた接線が、円と接する条件を立式する方針です。解法14や15は方向ベクトルを用います。

では、具体的に見ていきましょう。

なお、解法6以降は、この画像の下のほうの表を見るとわかる通り、
A:3次関数C上に点Pを設定して進める
B:円D上に点Qを設定して進める

の2つが対照的に登場します。


そのため、手書きの解法も、左の列が「A:3次関数C上に点Pを設定して進める」で、右の列が「B:円D上に点Qを設定して進める」というように書かれています。(左右を見比べることによって、解法の違いが分かりやすくなる工夫です。)

解法6~7:3次関数の接線が、円と接する

解法6と7は、3次関数上の適当な点Pで接線を引き、それが円と接するという条件を立てるという方針です。
ただ、これでは3次関数そのものが円と接するわけではないため、点Pが円上に存在するという条件も立てます。

まず簡単な後者ですが、これは点Pの座標を円Dに代入するだけでできますね(画像中の※の条件です。)

次に、前者の「3次関数から引いた接線が、円と接する条件」ですが、ここでは2つ紹介します。
解法6:接線と円の中心の距離が、半径に等しい(d=r)
解法7:接線と円を連立して判別式=0

解法6のように、点と直線の距離の公式を使うほうが、解法7の判別式より条件式を出すのは、やや計算が簡単になることが多いですね。(画像中の条件マルA)

しかし、※の条件と、マルAの条件を連立しようとすると、(理論上は解けるはずなのですが、)計算が激烈すぎて断念しました。

以上の様子が、この画像の左半分です。

解法8~9:円上の点Qから接線を引き、3次関数と接する

解法8~9は、解法6~7と思想はほぼ同じ。スタートが3次関数なのか、円なのかの違いですね。

円上に点Q(cosΘ,sinΘ)をとり、
これが3次関数C上にある条件(※※)と、点Qで引いた円の接線mが3次関数と接する条件を立てて、連立します。

※※の条件は簡単で、点Qの座標を3次関数に代入するだけ。
円から引いた接線mと、3次関数が接する条件ですが、解法4~5で紹介した通り、連立したのちに

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【3次方程式が重解になる条件】

①極値が0になる(つまり、3次関数がx軸と接する)
②3つの解をα、α、βとおいて、解と係数の関係を立式する
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

の条件を使いました。

①のように極値が0になる条件を使ったものが解法8で、②のように解と係数の関係を使ったものが解法9です。

ただし、解法8~9は、解法6~7と根本的な考え方は同じなので、出てくる式も同じです。
だから、計算が難しすぎて、これも断念しています。

解法10~11:接線が一致

解法10と11も同じ考え方です。
すなわち、接線が一致するという考えです。
3次関数C上に点Pを取ってスタートしたものが解法10で、円D上に点Qを取ってスタートしたものが解法11です。

あとは、手書きの解答を読んでくれればわかると思うのですが、これらは答えが出るレベルの計算でした。(面倒ではありますが)

解法12~15:直行条件を利用

解法12~15は、直行条件を利用するパターンです。
12と13は、傾き×傾き=ー1の利用で、14と15はベクトルの内籍=0を利用するものです。

詳しくは手書きの解答を見てほしいのですが、おおざっぱに言って、どれを使っても同じような条件式が出てきて、解けます。

解法16~17:法線の利用

16~17は、法線の利用です。
使い慣れないかもしれないですが、ようするに直行条件を使うのと同じなので、得られる条件式も解法12~15と同じになります。

解法18~19:ベクトルの平行条件の利用

最後は、ベクトルの平行条件の利用です。
といっても、法線ベクトルを使った後に、ベクトルの平行条件(実数倍)を使うので、結局は直行条件を使うのと同じです。

何が違うかというと、
法線を求めて原点を通る条件を遣ったのが16~17なのに対し、
法線ベクトルを出して、原点からの方向ベクトルと平行としたのが18~19です。
(要するに、見かけがちょっと違うだけで、ほぼ同じです)

別解をたくさん出したという実績が欲しくて、実用的ではない解法をねじ込んだだけなので、あまり真剣に見なくてもよいと思います。

まとめ:

以上、(後半になるにつれて適当になりましたが)、一通り解法を見てきました。
冒頭にも書きましたが、最も大切なのは解法1であり、解法1を選ぶという判断力です。

具体的に言うと、
・図形的に考えて、極値だの接するだのと考えると、論述が難しくなり、方針を間違えやすくなる。そのため、なるべく方程式の論理に持ち込む。
・円が絡むと、次数が高い方程式が生まれがち。でも、臆することなく進むのが吉。
・来年以降は、どのようなパターンが出されるかわからない。円と3次関数が絡む問題は貴重なので、この際に接する条件などを整理してまとめておくべし

などでしょうか。

以上、一つでも参考になれば幸いです。

敬天塾作成の解説

2021(1)文数 解説

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