2021年東大世界史(第二問小論述)入試問題の研究 

講評

第2問 問1(a) 14世紀〜15世紀にかけての西欧世界における農民の地位向上の社会的・経済的要因

難易度 やや易

→ コロナ禍を意識して、黒死病(ペスト)の話を関連づけてきたものと思われるが、基本的な問題に分類されるだろう。

(b) ロシアの農奴解放令後も農民の生活が改善されなかった理由

難易度 標準

→ 本問と問3は奴隷制・農奴制に絡む問題である。ご参照まで、一橋大学1988年第2問はぜひ研究されたい。


 アメリカ合衆国とロシアの近代化において1860年代の奴隷制と農奴制の廃止は、重要な画期であった。それぞれについて廃止までの経過とその意義について述べなさい。その際、アメリカでは奴隷制が国内の戦争を経て廃止されたのに対して、ロシアでは農奴制が大きな政治的混乱もなく廃止された理由についても言及しなさい(400字以内)

「一橋大学1988年第2問」より

問2 フィリピン革命後の統治体制の変遷について論ぜよ

難易度 やや難

過去問研究をきちんとしてきた人であれば、2019年以降、太平洋委任統治領の中論述やオーストラリア史中論述といった、学校や予備校ではおまけ程度にしか語られない太平洋地域が頻出になったことに気付けたはずであり、準備を進められたはずである。

当日解いた所感

難易度 問1(a) やや易 (b) 標準
    問2 やや難
    問3 標準

問1(a) 14世紀〜15世紀にかけての西欧世界における農民の地位向上の社会的・経済的要因

→ コロナ禍を意識して、黒死病(ペスト)の話を関連づけてきたものと思われるが、基本的な問題に分類されるだろう。

 

(b) ロシアの農奴解放令後も農民の生活が改善されなかった理由

→ 敬天塾の授業では、奴隷制に絡む問題の練習を何度も行ったが、ズバリ本問と、第2問の問3は奴隷制・農奴制に絡む問題である。授業では、一橋大学1988年第2問を紹介していた。

アメリカ合衆国とロシアの近代化において1860年代の奴隷制と農奴制の廃止は、重要な画期であった。それぞれについて廃止までの経過とその意義について述べなさい。その際、アメリカでは奴隷制が国内の戦争を経て廃止されたのに対して、ロシアでは農奴制が大きな政治的混乱もなく廃止された理由についても言及しなさい(400字以内)

「一橋大学1988年第2問」より

この問題の周辺知識をしっかり分析検討できた受験生は本問を秒で片付けられただろう。

 

問2 フィリピン革命後の統治体制の変遷について論ぜよ

→これは難易度が高かった。だが、過去問研究をきちんとしてきた人であれば、2019年以降、太平洋委任統治領の中論述や2020年のオーストラリア史中論述の流れを組めば、学校や予備校ではおまけ程度にしか語られない太平洋地域の島にも注意するようにという東大側のメッセージは汲み取れたはずであり、資料集や教科書で準備を進められたはずである。

また、1985年の反帝国主義運動をテーマとした大論述を通じて周辺知識を確認していれば、大枠はすぐさま理解できたはずである。

 

問3 南アフリカにおけるアパルトヘイト政策撤廃の背景

→東大が大々的に出題していないテーマ史として「奴隷史」が挙げられる。この点、敬天塾の予想問題演習では幾度となく取り上げてきた

黒人奴隷といったものから、マムルークに至るまで、奴隷の種類は地域によって様々である。「綿花」や「キング牧師」「ハイチ」「象牙海岸」の話や三角貿易の話、さらには古代にも目を向けさせ「スパルタクス」あたりも気をつける必要があるだろう。

これだけ各時代各地域で出てくる事柄であるにもかかわらず、資料集や教科書では特集記事が全くといっていいほどないこうした盲点を東大教授が見逃すとは思えず、大々的な問題を今後出題してくることは十二分にありうる。

奴隷史関連では、京大2001や一橋の1988や2017で出題されている。奴隷という切り口に限らず、黒人差別という切り口にまで目を向けさせ、「マンデラ」あたりを投入してくることもありえると敬天塾の直前講習では述べたが、ズバリ的中である。

また、圧政への抵抗という文脈で、南アフリカに赴任経験のある「ガンディー」あたりを指定語句に盛り込んでくることも、いずれはあるかもしれない。東大教授が本気を出して1年かけてつくる問題ゆえ、正直どのような切り口で攻めてくるかはわからないが、きっと良問であることに違いはない。来年以降が楽しみである。

再現答案と得点開示を分析して気づいたこと

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