東大英語 第1問A(英文要約)制覇の極意(2023年実況中継)【各論】
こちらの【各論】では、私が2023年度1Aをどのように長文を読み解き、どのように解答文を紡いでいたのか、思考プロセスを詳細にお伝えしたいと思います。
(編集部注)
もっと汎用性の高い解法を説明した1A【総論前半】・1A【総論後半】も併せてご覧ください。
まず、2023年度1Aの本文を和訳した以下の資料をダウンロードしてお手元に置いてください。
目次
2023年度1Aの本文を和訳
2023東大1A日本語訳どのように本文を読んでいったのかを実況中継
まずは第1段落を掴む!
❶ 2010年代、私達はあまりに多くの物を持ちすぎているのではと不安に駆られていた。 大量消費が環境に及ぼす影響に気づくようになり、そして、我々自身の生活をソーシャルメディア上で発信したいという欲求によって、私達は物よりも経験を重んじるようになった。 現在、我々は、新たなものについて不安に駆られ始めたのだ。それはtoo little timeだということだ。
長文の顔を飾る第一段落ですので、読解速度を意図的に遅めて丁寧な読み込みを心がけました
補註で「consumerism 大量消費」が挙げられていましたので、モノに絡む話なのかなと一瞬思いましたが、
value experience over things(物よりも経験を重んじる)とありますので、
性急な判断は避けねばならないと自戒しました。
さらには、第1段落の末尾でそれまで言及されていなかった時間(time)がいきなり登場しています。
段落の末尾で不意に新情報が提示された場合、次の段落で伏線回収がなされるはずです。
しかも、too little timeと、
わざわざtooという強調表現を用いて、
時間の少なさに言及していますから、
主要論点は「時間」なのかなと思い始めました。
この時点で脳内をよぎったのは、本文の段落構成が総論編で述べたどの基本パターンになるかということでした。
東大2023年1A各論編2021年度のようにPattern④だとまとめづらいよなあと心の中で思う一方、
Pattern①〜③であっても最難と名高い2016年度級の1Aなら、
即座に別の大問攻めに転換しようと心づもりはしていました。
なんと、いきなり第8段落へ!
ここで、私は第2段落にいかず、敢えて最終の第8段落に視点を移しました。
❽short of timeを感じている人々は、不安に駆られたり気落ちしたりしやすい。 彼らは、運動したり健康的な食事をとることをあまりしないようだ。 また、彼らは仕事での生産性も低い。 このことから、我々がどのようにtimeを過ごすのが最善なのかについて、心理学者達の興味関心が増しているのはもっともなことだと言える。
ここでも、少しゆっくり目に情報収集に努めました。
第1段落末尾でtoo little timeとありましたので、
「時間が足りない」ことが本文の主要論点なのか確かめたかったのです。
すると、第8段落でも、short of timeやらthe best ways to spend timeと「時間」に関する記述があるとわかったのです。
「これは、もう時間が主題だというので間違いない」と思い、
再度第1段落を読み込みました。
time(時間)がどうも主たる論点だと再確認し、
experience(経験)についても大切だ(value)と言っていることから、
この2点を意識して第2段落〜第7段落の冒頭と末尾部分だけを高速で拾い読みしようと思いました。
Pattern②の結論冒頭型であれば、
中盤にある段落では本文冒頭で提示された結論を補強する要素が連なっているはずですね。
ただ、総論編で述べたようにPattern①〜Pattern④のハイブリッド型も警戒しなければいけませんから、型にだけ当てはめ無思考に要約作業に入るのは危険です。
たとえば、西洋と東洋、男と女、過去と現在といったような対立構造を部分的に設けている可能性もあるからです。
第2~7段落を15秒で斜め読み
さて、話を戻します。
次に私がしたのは、「斜め読み」です。
第2段落から第7段落の冒頭と末尾だけ「高速で」(15秒程度)斜め読みをしながら、その時に気になった箇所にマルをつけました。
マルを付けた箇所のみを抜粋してご紹介いたします。
以上が、15秒程度で第2〜第7段落冒頭と末尾を高速で斜め読みした際に、気になった箇所です。
特に赤文字のところは、マルをつけた箇所です。
なお、第5段落のcontaminated timeは段落の中盤にある単語ですが、引用符(” “)で囲まれていたので、気付きました。time(時間)に関するワードでしたのでマルで囲った次第です。
第3段落で、a number of reasons(複数の要因)とだけ書かれていましたので、
おそらく第4段落以降で説明されるのかなと心づもりしたのですが、
第4段落の冒頭を速読した時に何の話か全く掴めませんでしたので、
いったん飛ばして第5段落に視点を移しました。
すると、いきなり「Next」ときていたので、「おそらく、さっき読み飛ばした第4段落が1つ目のreasonなのかな」と目星をつけました。
第6段落の冒頭でも「Add to this」とありましたので、
第4〜第6段落は、おそらく第3段落で示されたa number of reasonsの例示ゾーンなのだと判断しました。
さて、この高速斜め読みを通じて、第1段落と第8段落を考察した時点で思い描いていたテーマ(時間や経験に関するお題)に反するような記述は、第2〜第7段落の冒頭と末尾には確認できませんでした。
それゆえ、Pattern②で確定して良さそうだと判断し、
直ちに第2〜第7段落の精読作業に取りかかりました。
ここまでで、試験開始90秒が経過です。
核心部分を推定!
❷心理学者たちは、経験の方が形のある物よりも幸せな気持ちをもたらしてくれることをわかっているが、どの経験を追い求めるべきなのかについては、私達が決めなければいけない。 間違った選択をして、その結果、貴重な時間を無駄にしてしまうのではという恐怖心は、我々の多くが深く実感するところである。
冒頭でいきなり、「経験>物」を主張していますね。
第1段落でも、value experience over thingsと言っていましたので、
「経験」が要約に際して重要な要素になるのだろうと思いました。
そのまま読み進めると、因果性を表すthereforeが用いられ、
その直後にwasting valuable timeとありましたので、
どうやら「限りある時間で、少しでも良い経験を積みたい」ということかなと、
本文の核心部分を推察しました。
推察を確信に変えようとしたものの・・・
この見込みを立てた状態で、第3段落に進みました。
❸この問題には皮肉めいたところがある。 というのは、私達にはここ数十年で以前にもまして、自由な時間が増している。 しかし、a number of reasonsにより、そのようには感じられていない。
非常に短い段落です。
ですが、侮ってはいけません。
冒頭で、irony(皮肉)なんていう言葉が出ていて、コロン(:のこと)の後ろで説明がなされています。
すなわち、昔より今の方が時間にゆとりがあるのに、私たちはそうは感じていないと言っているのです。
その理由は複数ある(a number of reasons)とだけ言って、この段落は終わっています。
当然、その理由って何なの?と思うわけです。
映像授業の情報構造Basicでも詳述しましたが、英語は具体的な情報を後の方に持ってくる特性があります。
第3段落は確かに説明の乏しいゾーンではありましたが、
説明不足分を第4段落以降で詳しく説明するからちゃんと読んでねというメッセージが込められているとも言えます。
そうして、次の第4段落で、我々(=現代人)が時間に余裕がないと感じる理由の1つ目が来ると意気込んで読み始めたのですが・・・
❹2019年出版の 『Spending Time』の中で、ダニエル・S・ハマメッシュは、私達の寿命が1960年以降で僅か13%しか増えていない一方、私達の購買力は198%も上がったのだと説明している。 「It makes it difficult to stuff all the things that we want and can afford into the growing, but increasingly relatively much more limited, time that we have available to purchase and to enjoy them over our lifetimes」と彼は記している。
いきなり作品名やら人名が出てきましたが、
これらの情報が本文の核心になることは基本的にありませんから、
さらっと読み流してみました。
ただ、ダニエル氏の発言部分も含め、構文を掴み取りづらく、「我々が時間に余裕がないと感じる」理由はの1つ目は何なのか、よくわかりませんでした。
ただ、ざっくりとなら、「買い物はたくさんできるようになったが、時間が足りないっていうことなのかな」とつかんだものの、
これを解答に盛り込むために、どうまとめれば良いか瞬時に判断できず、
この第4段落の横に☆印をつけて、あまりこだわらずに第5段落に進みました。
超難しい構文が登場してるけど、どうする?
なお、ダニエル・S・ハマメッシュ氏の発言内容を英文のまま掲載しているのは、一読した時に、このゾーンの構文や意味がいまいちクリアにつかめず、モヤモヤした気分のまま第5段落に進んだ私の心境を共有してもらいたかったからに他なりません。
せっかくですから、このゾーンの構文解説を軽くいたします。
まず、大きな文構造としては、It makes it difficult to〜の構文となっています。ただ、冒頭のItが指すものは、文末のthat以下やto以下ではなく、直前に書かれていた「私達の寿命が1960年以降で僅か13%しか増えていない一方、私達の購買力は198%も上がった」ことを指しています。次に、stuff ■ into ▲ という大きなカタマリがあります。こんな熟語を知っている受験生はほとんどいないと思いますから安心してください。■と▲の中身は
■=all the things that we want and can afford
▲=the growing, but increasingly relatively much more limited, time
となります。timeの後ろにthat節がありますが、これはtimeを修飾する関係代名詞となっています。
つまり、timeは前と後ろの両方から修飾されているのです。
さらに、関係代名詞の中にあるthemはall the things that we want and can now afford を指しています。
これを訳すとなると、かなりの日本語能力が求められます。
正直、4B英文和訳の問題の数十倍は難しいでしょう(笑)ですが、ハッキリ言います。
訳す必要がありますか?
この構文に下線が引っ張られているわけでもありませんから、
ざっくりとした大意をつかめれば良しと考えましょう。
この1Aだけで東大英語は構成されているわけではないのですから。
ちなみにですが、2023年度1Aの長文の中で、この第4段落で最も悩みました。ひとまず横に置いて、第5段落に視点を移します。
第5段落は情報量が多いが理解しやすい
❺Next、私達の携帯電話中毒が挙げられる。 アメリカの大人は、毎日3時間半もの時間を自分たちの携帯端末に費やしている。大量のメールやテキストメッセージを処理し、ソーシャルメディアの情報更新や四六時中流れてくるニュースに乗り遅れまいと奔走し続けているのだ。 そして私達の時間の多くは「contaminated time」なのだ。これが意味するのは、我々はあることをやっているときにも、何か別のことを考えているのだ。過ぎ去る時間の一瞬一瞬で、より多くのものを得ようとする(たとえば、テレビを見ながらツイッターをチェックするようなことを)と、私達は生産性のあることができたと思うのだが、実際にはそのせいで私達はより一層ぐったり疲れてしまうのだ。
非常に情報量の多い段落です。
まず、冒頭で挙げられたcellphone addiction(携帯電話中毒)は分かりやすい要因です。
携帯電話に現代人は時間を取られていますので。
そのまま読み進めると、段落の中盤で「contaminated time」という見慣れぬ言葉が出てきます。
直訳すると「汚染された単語」となりますが、こういった意味不明な単語が出てきたら、必ず後ろにコロン(:)やハイフン(ー)などで説明がなされるはずですから、ビビってはいけません・案の定、直後にハイフンがありました。
すると、when we are doing one thing but thinking about something else(我々はあることをやっているときにも、何か別のことを考えているのだ)とあります。
さらに、その後ろでは、テレビを見ながらツイッターを確認するという例で補足説明をしてくれています。
身近な話題ですので、この第5段落は理解しやすかったです。
ひとまず、答案にcontaminated timeの訳語を入れたところで、少ない文字数では不明瞭になってしまいますから、その意味するところを簡潔にまとめないといけないなと思いました。
この時点で、問題冊子の余白に、思いついたばかりの「ながら作業」という言葉をメモしました。
第6段落もアッサリ
❻Add to this、こんにちのexperience economyの中でより増えている選択肢を。今晩行くことができるあらゆる演劇や講演会やワークショップを考えてみるとよい。
続いて、第6段落です。
Add to thisとありましたから、要素の一つを紹介していることは分かっていました。
ただ、いきなりexperience economyやらworkshopsやら、普段それほどお目にかかることのない単語が出てきたのは気になりましたが、
expanding options(選択肢が広がる)という話が、
第1〜第2段落で述べられた「experience(経験)を重んじる」の話につながっているのかなと思いました。
ただ、第5段落に比べると、あまりにアッサリした段落でしたので、少しモヤモヤした気持ちを持ったまま、第7段落の精読作業に入りました。
どのPatternに該当する?
❼私達の多くが、「time famine」 と心理学者が称するものに苛まれていることは驚くことではない。 attention economyに異論を唱える声もあるが、私達にtime-poorを感じさせる原因が近いうちになくなることはない。 テクノロジー企業を例に挙げると、あなたがデバイスにどのくらいの時間を費やしているのかを教えてくれるアプリを開発したかもしれないが、彼らのビジネスモデルはあなたが今後もデバイスを利用し続けるすることをベースにしたものなのだ。
いきなり、冒頭で”time famine” と見慣れぬ単語が来ていますが、第1段落末尾にあったtoo little timeと同義なのだろうと考え、さほど驚きはしませんでした。
ただ、attention economyやらアプリやらと次々に新たな要素を盛り込んで来ています。
ここで、急に不安の念に駆られました。
というのも、私は、本問をPattern②の結論冒頭型だと考えていましたが、これは東大側が用意したワナなのではないかと思い始めたのです。
どういうことかというと、現時点で登場している「要素」が
- 第4段落(いったん横に置いています)
- 携帯電話中毒・ながら作業
- 幅広い選択肢
- アプリ
といったものなのですが、第5段落の「ながら作業」以外は、それほど情報価値があるようには思えず、これを単に羅列して答えを書くのはどうなのだろうかと思い始めたのです。
一言要約法を決行!
次の第8段落については、問題を解き始めてからすぐにチェックをしているので、どのように要約文をつくれば良いのか悩み始めます。
ここで、「一言要約法」を決行することにしました。
則ち、本文全体を通して、何が核心なのか15〜20文字程度でまとめるというものです。
まず、時間が足りない(too little time)は外せません。
ただ、experience(経験)の盛り込み方で悩みました。
そこで、第2段落を見返すと、experienceがhappinessをもたらすと述べていること、
さらにmaking the wrong one(=experience)をfear(おそれ)していることが末尾に書かれていることを再確認し、
再度第8段落を読み込みました。
❽short of timeを感じている人々は、不安に駆られたり気落ちしたりしやすい。 彼らは、運動したり健康的な食事をとることをあまりしないようだ。 また、彼らは仕事での生産性も低い。 このことから、我々がどのように時間を過ごすのが最善なのかについて、心理学者達の興味関心が増しているのはもっともなことだと言える。
すると、時間不足(short of time)に苛む人は、メンタルをやられているんだなということを再確認できました。
気になるのが、第2段落に続き、psychologistsが登場しているので、答案に盛り込むべきか一瞬迷いましたが、核心情報ではないと判断し切り捨てました。
さて、ここまでの流れで、一言要約法を決行するなら、絶対に人々が不安や不幸に陥っている旨は盛り込みたいと思いました。
そこで、まとめ上げた一言要約が以下のものです。
現代人は多様な経験をして幸せになろうとするあまり不幸になっている
これを答案骨格に据え、要素を肉付けしていく方針でいこうと決断しました。
肉付けの仕方でモヤモヤ
この時点で3分が経過していましたが、ただ、ここからの道のりが長かったです。
第7段落でも申し上げた通り、第3段落にあるa number of reasonsに食いついて、無思考に第4段落〜第7段落の各要素をまとめるだけで本当にいいのかという疑念が脳内を渦巻いたからです。
ここで、一旦横に置いていた第4段落を再度読み込みます。
すると、モヤモヤの正体を突き止められたのです。
そもそも、第1段落で、モノよりも経験に重きを置くようになったと言及し、第2段落でもその旨を補強しています。
それにもかかわらず、第4段落ではspending power(消費力)が増大したことに言及し、それによって時間不足に陥っている旨、述べているのです。
第1段落冒頭では、「2010年代(In the 2010s)」に我々はモノを大量消費することを懸念していた旨が書かれており、
第4段落で紹介されているダニエル・S・ハマメッシュの著書は2019年出版とありますから、話は繋がります。
ですが、第1〜第2段落では、モノ(material goods)より経験(experience)が大事だと言っているわけですから、
「現代人は多様な経験をして幸せになろうとするあまり不幸になっている」を答案の核に据えるなら、モノの消費に絡む第4段落の内容を解答に盛り込むのは不適だということになるのではないかと思い、何度も第1〜第4段落を読み返しました。
やっと納得する結論が出たが、どうまとめる・・・?
その結果、腑に落ちる結論にたどり着きました。
すなわち、
第3段落で述べられている「自由時間が増えているのに、そうは思えない」理由を第4段落から第7段落で詳述していることは間違いない。でも、モノをたくさん買うことが善とすることから、多様な経験をすることを善とすることに移行している過渡期が現代である。
過渡期なので、前者の要素がゼロになっているわけではない。それを第4段落で説明している。後者に絡んでは第5段落〜第6段落で具体例を挙げている。ただ、答案骨格に「多様な経験を積もうとして時間不足に陥っている」旨を書くのなら、第4段落の内容を盛り込むべきではないのではないか。
と結論付けたのです。
この解釈が正しいかはわかりませんが、東大側がここまで考えて作問したならスゲーなと思いました。
第4段落を除外するとなると、
第5段落〜第7段落で目ぼしい要素と言えばcontaminated time(第5段落)や
expanding options(第6段落)あたりだけになってしまいます。
正直、70〜80字を埋める要素としては、情報量が足りないなと思い始めました。
東大英語では「駆け引き」が大事
この時点で、時間が経過していることに焦りを覚え始めました。
「1分で1点稼ぐ」スタンスで臨まねばならない東大英語にあって、この第4段落にいつまでも貴重な時間資源をかけたくはなかったのです。
自分が受験生の時なら、この第4段落が仮に盛り込まねばならない要素だったとしても、ここで時間を取られるくらいなら、1〜2点の減点覚悟で切り捨てて無難な答案を仕上げ、さっさと他の大問に移ると思います。
東大英語は時間制約の厳しい試験であるからこそ、こうした「駆け引き」が大事なのです。
そこで、思い切った解答方針を決断し、殴り書きで書いたのが以下の4つです。
1A英文要約 解答例
① 昔に比べ自由時間が増えたはずなのに、時間の価値を高めようと、あれもこれもとマルチタスクで多くの経験を欲するあまり、時間不足に苛み、心身を害し生産性を失っている。(80字)
② 自由時間を少しでも価値あるものにしようと多様な経験を欲するあまり、スマホのながら作業や、あれもこれもと予定を詰め込むあまり現代人は不幸になり生産性も落ちている。(80字)
③ 多様な経験をせねばと強迫観念に囚われるあまり、自由時間が増えたにもかかわらずスマホを用いたマルチタスク等で時間不足に苛む皮肉的な状況に陥り心身を害するに至る。(79字)
④ モノ消費から経験消費に比重を置く現代人は、時間対効果を追求し多くの経験を積んで幸せになろうとするあまり、逆に時間不足に苛み、心身を害し、生産性も低下している。(78字)
上記の①〜③が、7分経過時点で思い浮かんだ答案骨格です。
「現代人は多様な経験をして幸せになろうとするあまり不幸になっている」という核に、第5段落〜第6段落の要素を織り交ぜたものです。
作成にあたっては、第8段落の要素をMUSTと考えました。
①〜③を書いた段階で、スマホのながら作業という例を盛り込む必要があるのだろうか、もっと抽象化した方がいいのだろうかと思って書いたのが④です。
この時点で10分を経過していたので、一旦解答を止めました。
これ以上、時間を割いてもメリットがないと判断したからです。
編集後記
いかがでしたでしょうか。
過去問集の解答例を眺めるだけでは、要約力は伸ばせません。
大谷選手のDVDを見ても、160キロの球を投げられないのと一緒です。
ピカソの絵画を眺めるだけでは、画力は上がらないのと同じです。
この実況中継を通して、どのように長文を「読」み「解」いているのかを、皆様に少しでも実感していただけたなら、望外の喜びです。
数学と似ていて、いきなり答えがポンと出てくることはあり得ません。
方針を立て、論を進める中で、うまくいったなら良しとし、つまづいたなら一旦戻って考え直す。
この試行錯誤の先に、答案を紡ぐのです。
優れた答案例だけ読んでいると、意外に、この事実を忘れがちです。
本稿で学んだことを、ぜひ、今日からの東大対策に繋げてください。心から応援しております。
有益なリンク
総論編でも申し上げたように、背景知識があると読解スピードが格段に上がります。
本問で取り上げられた問題は、モノ消費とコト消費(経験消費)としてよく知られているテーマです。
人々の余暇が増えるなか、企業はなんとかして現代人の可処分時間を「奪い合おう」として、様々なサービスやコンテンツを提供しているのです。
まさに、今回のお題の話そのものですよね。
(多読の重要性)
(TED)
(The Economist)
https://www.economist.com/christmas-specials/2014/12/20/why-is-everyone-so-busy
(Business Insider India)
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東大英語 第1問A(英文要約)制覇の極意(2023年実況中継)【総論前半】
2022年東大英語(第1問A 英文要約)入試問題の解答(答案例)・解説