2020年東大英語(第1問A 英文要約)入試問題の解答(答案例)・解説

東大英語の陣頭を飾る1A英文要約は、得意不得意が大きく分かれる大問の一つだと言われています。
その理由には幾つか考えられますが、1Aが「思考力」「日本語表現力(運用能力)」を問うた大問であることは真っ先に挙げられましょう。

近年、英検やTOEICといった資格試験を低学年のうちからチャレンジする傾向が強まってきました。
短期目標を定めて英語学習に邁進する姿勢は実に好ましいところではありますが、東大英語とは頭の使いどころが違います。
私も、英検、国連英検、TOEIC、TOEFLとあらゆる英語資格試験を受験してきましたが、それらの試験で脳みそを使うことはほとんどありませんでした。
単語を覚えて、長文を早く読めれば解ける問題ばかりです。
ですが、東大英語は単語が分かっていても解けない、本文を読めても上手くまとめられないといった具合に、試験科目に「英語」と銘打ちながら、上っ面の英語力ではなく受験生の「思考力」「日本語運用能力」を東大では問うてきています。

これは、東京大学が世界的な研究者養成機関であることとも関係しています。
英語が使えたら世界で通用する一流の研究者になれるわけではありません。
日本語を話せる日本人は、みなが優れた研究者として国内で認知されるわけではないのと同じです。
このように特殊なチカラを問うている試験だからこそ、東大英語に特化した対策が必要なのです。

さて、2022年〜2023年の東大過去問について、敬天塾では詳細な思考プロセスを実況中継という形でご紹介してきました。
(編集部注:こちらの記事の最後にリンクを掲載しています)
日本一詳しく東大英語の極意を解説したつもりです。ぜひエッセンスを貪欲に学ばれてください。
本稿で扱う2021年度につきましては、要点解説ということでライバル達に差をつけられるポイントに絞って解説をいたします。
汎用性の高い解法や、東大英語を絶対的得意科目にするための訓練プログラムをお知りになられたい方は、敬天塾の映像授業と過去問の実況中継解説をぜひご活用ください。

 

それでは、2020年度1A英文要約の要点解説を始めたいと思います。

(所感)

2019年〜2021年の東大1Aでは実に不思議なことに、前書きで長文の内容や要約して欲しいポイントを明示していました。
2020年であれば、「以下の英文は、高齢者にやさしい(age-friendly)町づくりを促進するための世界的な取り組みについて論じたものである。」とご丁寧に注意書きがなされています。
なぜに、天下の東京大学がこのようなサービスをしているのでしょうか。
多くの塾関係者が意図不明と評価されていますが、誤解を恐れずに言うならば、2016〜2018にかけての1A要約の出来があまりに悪かったからではないかと推察しています。

2016〜2018の1Aでは「要旨」を答えるよう設問要求がなされました。
ですが、要約と要旨の違いが分かっていない受験生がかなり多くいたのでしょう。
トンチンカンな回答が金太郎飴のように大量に並んでいたと言われています。
(なお、要約と要旨の違いについては、こちらの記事をご参照ください。https://exam-strategy.jp/archives/9857

こうした事態を憂慮した東大教授が、「この文はね、●●について書かれているものですよ」「▲▲について、まとめてくださいね」とヒントを与え、受験生がきちんとした答案を書き上げてくれるようになるのか、3年スパンで実験したのではないかと感じています。

ちなみに、2022年〜2023年にかけては2015以前の「要約せよ」に戻っています。
これは、2019〜2021年度入試で提出された受験生答案が、全体的に東大側が要求する水準に近づいたと教授陣が評価したからだと、はじめ私は思いました。
ですが、実況中継解説でも詳述した通り、2022〜2023の問題は2015年以前とも違うように私は感じました。
詳細は、敬天塾の過去問データベースにアップしておりますので、ご参照ください。
2016〜2018の3年間で「要旨」を答えさせ、2019〜2021の3年間で詳細な前書き情報を載せ、2022年以降は要点が一見して掴みづらい文章を出すようになってきています。
3年単位で、様々な出題パターンを試しているようにも思えます。

 

少し話が長くなりましたので、いったん、2021年度に戻るとしましょう。
本稿で扱う2020年度1Aについては、前書きが置かれる特殊性はありましたが、本文自体は非常に読みやすく、70〜80字で要約するのも、それほど難儀ではなかったように思われます。
ですので、難易度としては一見すると「標準」といったところでしょうか。
4段落構成で、使われている語彙もマイルドなものばかりでした。
ただ、前書きで「高齢者にやさしい町づくり」云々が語られているため、このことを答案に盛り込むべきか悩んだ受験生は多そうです。

前書きの存在で、かえって動揺した受験生がいたという意味では「やや難」と言えるのかもしれません。
ちなみに、2020年度入試では、2A自由英作文が伝説級の難問でしたので、それとのバランスを図って1Aを読みやすい文章にしたという説も考えられそうではあります。

(要点解説)

まず、ざっくりと各段落の要点をみていくとしましょう。

第1段落の冒頭で、前書きにあった「高齢者にやさしい(age-friendly)」の話がざっくりと書かれています。
その後、第7代国連総長の発言が引用されています。

続く、第2段落では、WHOの発表内容がつらつらと紹介されています。
各段落の要点を繋ぎ合わせれば本文を要約できると短絡的なテクニックを教えられてきた人にとっては、この第2段落をどう活かせば良いのか、きっと悩んだことでしょう。
それを警戒して、東大側は前置きを設けてくださったのかもしれません。

第3段落では、いきなり冒頭で「In practice, however,」と来ています。直訳すると、「しかしながら、実際には〜」ということになります。
この時点では、何と比較してhoweverを用いているのかよくわかりませんでした。
そのまま読み進めてみると、若者や家族のデータを集められていないようなことが書かれています。

そして、締めの第4段落。いきなり冒頭でWhat accounts for this gap between vision and practice?と問題提起しています。
vision v.s. practiceという二項対立的な話でまとめようとしています。
ここで、そういえば、visionは第1段落の第2文で、practiceは第3段落で示されていたことを思い出しました。
そして、段落の最後で、幅広い世代からデータを集めることが大事だと述べ、本文が締めくくられています。

いかがでしたでしょうか。
正直、それほど複雑な話はしていません。
ここで、敬天塾出身の東大合格者が書いた答案をご紹介するとしましょう。

(敬天塾出身の東大合格者の答案)

高齢者にとっての善を皆にとっての善だと捉える思い込みのせいで、見通しと現実の間に齟齬が生じている。状況を好転させるには広範な世代からのデータの収集が急務となる。(80字)

まあ、これくらい本番でサクッと書ければ十分なような気もします。
前書きにある「高齢者にやさしい町づくり」云々の話を答案に盛り込むべきかは悩みどころではあります。
仮に盛り込むのであれば、以下のようにまとめるのが良さそうです。

(敬天塾解答)

高齢者にやさしい町づくりは幅広い世代にとって共通の利益になると謳われながら、実際には高齢者の利益が偏重されている。全世代からデータを集め改善を模索すべきである。(80字)

いかがでしたでしょうか。
本年度は英作文が激ムズだった分、1Aはマイルドに思えました。
東大英語部会もバランスをとっていらっしゃるのだなあと感じた次第です。
なお、新傾向と言っても良さそうな2022年〜2023年度の過去問に関しては、より詳細な思考プロセスをご案内しておりますので、ぜひ併せてご参照ください。

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