2024年(令和6年)東大日本史を当日解いたので、所感を書いてみた。

敬天塾の塾長と講師が東大の二次試験当日(2024年の2月25日・26日)に入試問題を解いて、所感を記した記事です。他の科目については、こちらのページにリンクがございます。

【科目全体の所感】

総合難易度 標準

特に極端な難問や奇問はなく、標準的なセット。
4問とも、例年の解法が通用するも、記述や読解に困る仕掛けもあり、従来の東大日本史を踏襲した内容だと思います。

第一問~第三問は文章資料と知識を柔軟に用いる問題、第四問は近年頻出である図やグラフの読み取りをも求める問題でした。

選定された複数資料をもとに歴史的考察を求めるという、歴史学の手法に迫る東大の入試であり、毎年ながら受験生を魅了する内容だと感じました。

第一問

難易度 標準 (過去問をやりこんだ人にとっては易)

テーマは奈良から平安初期における、天皇と太上天皇との関係や、天皇と官人との関係についてです。
※厳密には、嵯峨天皇が譲位した時から太上天皇ではなく上皇と呼ばれるようになり、それが一般化するのですが、本問においてはややこしいので太上天皇で統一します。

近年頻出である、奈良時代と平安時代の比較、そして天皇と官人の関係や、官人の登用に関する内容など、なんとなく見覚えのなる内容という印象です。
過去問を解いた際に、解説や答案例を読んで理解し「ハイ、お終い♪」とするのではなく、周辺事項まで踏み込んで、一歩進んだ内容まで理解しようと試みていた人からしてみると、かなり簡単な問題に思えたのではないでしょうか。

レベルとしては、標準としましたが、過去問のやりこんでいた人にとっては、「易」と判定されるかもしれませんね。

至る所で書いているような気がしますが、古代の日本においては、嵯峨天皇(上皇)が一つの分岐点になっています。
奈良時代と平安時代の区切りであり、律令制そのものの変遷にも関り、官僚機構のあり方にも影響を与えています。

まだまだ嵯峨天皇に固めた出題があるかもしれません。今後の受験生は、嵯峨天皇について調べておくと良いかもしれませんね。
嵯峨天皇絡みでまだ出題されていない事項は、奈良仏教との関係、天台宗や真言宗の保護の話、死刑廃止について、賜姓源氏の件、院政期との比較などでしょうか(思いつくまま)

知識レベル:2
読解レベル:4
記述レベル:3
☆過去問重要度:5

※答案を作成する前に評価したものです。今後の考察によって変化する可能性があります。第2問以降も同様です。

第二問

難易度 標準~やや難

は?
東大寺の技術なんて知らん!

と思った受験生が多いでしょうね。
一応、教科書や資料集などで少しだけ情報が書いてあります。
曰く、「大仏様は中国南方の雄大豪壮な建築技術で、貫(ぬき)と柱を組み込むことで構造を強化して、柱の途中に挿肘木(さしひじき)を差し込んで屋根を支える」と。
「雄大豪壮」は良いとして、貫だの柱だの挿肘木だのという細かい知識を、たった2行の答案に組み込むとは考えづらく、では何を書くのか。

様々考えましたが、設問Aは、資料(3)を要約・言い換えした内容が答えになるのではないかな?と思っています。

設問Bについても、頼朝の協力方法は資料に書いてあるので、問題は「頼朝の権力のあり方」の方。
1185年の時点で頼朝は守護や地頭の任命権を得ているので、その権力を使って、御恩に対する奉公として材木の運搬を手伝わせたとすればよいのだろうと思いました。
ファクトチェックはまだですが、参考までに。(間違ってたらすみません)

知識レベル:4
読解レベル:3
記述レベル:3

第三問

難易度 標準

資料文には受験生が事前に覚えてきただろう情報より、細かく載っていますので、あまり知識の差は出ないと思われます。

資料にはポルトガル船に対する規制が徐々に変化した様子が書かれていますが、転機になった島原の乱に注目して記述させる問題です。
これも、事前に知っている受験生も多いと思いますし、難易度としてはそこまで高くないのではないかと思います。

設問Aと設問Bで、各内容の一部が重なるため、どのように書き分けるか、などの気を遣う必要がありそうです。

知識レベル:2
読解レベル:3
記述レベル:4

第四問

難易度 やや難

毎年同じですが、やはり第4問が一番難しいですね。今年も歯ごたえがありました。
といっても、去年の第4問ほどの衝撃はありませんけどね。
まず設問Aは明治時代に小作農が増えた理由について。資料文とリード文に小作農が増えそうな理由が書いてありますが、3行には満たない。
では他の要素として何を書くのかについては、スタッフを意見を交わしましたが決定的なものが分からなかったので、すみませんが保留で。
※2024/2/26追記 与えられたグラフの出典元の本を参照したところ、松方デフレの影響だという記述を見つけました。もちろん松方デフレの直後の一定区間のみの影響とのことです。他の区間における要因は未確認です。

設問Bについては、図2が太平洋戦争の区間とダダ被りしていることに気づき、米の供出制と配給制に着目。
米の安定供給や増産をさせるという政治的意図は読み取れるかなと思います。

しかし、こちらも指定が3行なので、もう少し書けそう。とすると何を書けばよいか。これも、ハッキリと定まらなかったので、すみませんが後日までの宿題で。

全く何も思い浮かばないわけではなく、いくつか候補が思いつく問題のため、答案用紙が白紙で終わるというわけではありませんので、
受験生としては「何か書いて提出」できる問題ではあったかなと思います。

なお、久しぶりに戦後が出ませんでした。
細かいことを言うと、図2のグラフの一番最後はギリギリ戦後に食い込んでいるのですが、恐らく今回は関係ないかなと。
戦後の占領期の土地政策と言えば農地改革ですが、農地改革は1946年からと考えてよいですので。

知識レベル:5
読解レベル:4
記述レベル:3

 

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最後に(宣伝)

上記の記事は、敬天塾の塾長が執筆しています。
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