2013年 東大英語 1-A要約【抽象と具体、理系実験の処理、注目表現】

英語要約は難しい!?

東大英語の初っ端。
受験生の多くが苦手とする、要約問題ですが、満を持して書こうと思います。

そもそも、英語の要約問題が難しいことは分かってました。以前アメブロの方の読解をしようシリーズでも書いているのですが、要約というのは、レベル4の話です。しかも、日本語ではなく、英語で。

普通の英語の授業では、レベル1や2で終わっている所、レベル4の領域をいきなり求められるので、訓練不足になるのは当然。
文全体の構造を読み取るのも、段落の構造を読み取るのも、ほとんど教わりませんから、仕方ないのです。

但し、分析することで、解答の手順は限りなく集約出来ます。今回は、最も典型的であろう、2013年の英語要約の問題を取り上げてみましょう。

英文全体の構造を掴もう

では、英文の紹介です。

これが、2013年の東大英語の要約問題の英文本体です。

文章は、パット見で濃淡が分かりません。どこが大事な文章なのか、読んでみなければ分からない。そこが面白いと言えば面白いんですけど、受験生としてはスピーディに知りたい所。

ということで、私が提唱しているのが、レベル3やレベル4の把握の話です。つまるところ、段落構造の把握と、文章構造の把握です。ということでわかり易く色分けしてみました。

赤い所は、比較的重要度が高いポイント
青い所は、注目すべき表現
緑の所は、具体例です。

文章っていうのは、意味もなく文字を並べるのではなくて、筆者が意図的に並べるものです。ルールもあるし、典型パターンもあります。そのパターンをいくつか知っているだけで、文章の予測も出来ますし、論理展開も簡単。

一本の記事ですから、全て語ることは出来ませんが、簡単に解説していきましょう。

抽象と具体

読解をしようシリーズでも登場予定なのですが、先にこちらで。

論理的な文章は、抽象表現と具体表現が交互に登場しながら進みます。

抽象表現には、筆者の主張や意図が含まれることが多く、具体表現は、説得力を持たせ、読者にイメージさせることを目的に用います。つまり、要約の場合は、具体表現は捨てて、抽象表現を拾うことが、主な方針になります。

先ほどの図をもう一度ご覧ください。

文章の真ん中に、大きな緑の枠(具体表現)があると思います。

今回の話は、理系の実験の話です。実験というのは、何か法則や結論を導くために行われるものですから、具体例に当たります。

大切なのは、その前後の抽象表現。

「実験を要約しろ」と言われて、具体的な手順をツラツラ書くわけがありません。大事なのは考察部分や結論。つまり抽象表現である赤い所です。

今回は、の枠のすぐ直後に、い枠で、This suggest that とありますね。実験の結果を要約してくれているので、ここが最も大切な部分になります。

直後の抽象表現(赤い枠)を見てみると、これまでの実験内容をまとめたcomplexという単語が見えます。

これが最重要単語です。

要するに、「蜘蛛の糸は複雑(complex)だから強い」と言いたい文章だと分かります。

序盤のnot just に注目

どこが抽象表現で、どこが具体表現なのかを見極めるのに、注目すると良い表現があります。

今回は青枠で囲んでおきましたのでご覧ください。

まず初めの段落に、not just が見えます。
表論文は、通説とは違う事を言うのが目的なので、序盤で登場するnot just は非常に重要です。「通説ではこうだけど、実はそれだけじゃないよ」と言いたいわけですから、当たり前ですね。

じゃあ何が言いたいのか??と考えて、読み進めると、すぐに実験の話が始まりますので、しばらく結論はお預けです。

〇〇saysに注目

実験が始まったら、手順と結果が書かれます。手順は、細かい実験の進め方ですから、読み込んだ方が理解は増しますが、大切なのは結果の方。しかし英語では単純に「結果は~だった」と書かずに、教授の言葉を引用することが多いですね。
今回も、He now says や、they found that Buehler says などが登場します。この直後には文章の主題に近いことが登場しがちです。

今回の文章は、そもそも実験の中身の話なので、具体例の一部の扱いになり、重要度は低くなりますが、指定の字数が余りそうなら、盛り込みたい部分。

但し、単に発言しただけの場合と、確信めいたことを言っている場合がありますので、少し注意しておいた方が良いですね。

文章末のFor exampleは注意

文書の最後の方に、For example が登場します。先ほど書いたとおり、具体例は重要度が低く解答に使わないことが普通なのですが、今回は事情が違います。この文章は、具体例で終了している文章だからです。

文章の最後には、耐震構造の話とネットワークの安全性の話が登場しますが、全体の趣旨としては、蜘蛛の巣の構造の話です。つまり、ミスマッチしているわけです。
これをどう解釈するかは、議論が分かれることでしょうが、私はこう考えました。実は筆者の主張は耐震構造やネットワークの安全性を訴える方に力点が置かれていると。

いや、むしろ、耐震構造やネットワークへ応用が出来ると言いたいがために、蜘蛛の巣の例を引っ張って来た可能性すらあると思います。

理系の実験というのは、理論の発展だけでなく、実生活への応用も大切な要素です。研究するにもお金が必要。自分の研究の成果がどのように実生活において実利があるかアピールすることも、研究者として重要な要素だそうです。

解答の作り方

ということで、解答の作り方です。
先ほどから何度か貼り付けている、この画像の赤い部分をまとめるのが、主な方針です。

最も大切なのは、大きな緑枠の直後の赤い枠の中のcomplexです。緑枠の中の赤い枠は、字数に余りがあれば入れたいですが、時間がなければ入れなくても構わない。最後の耐震構造とネットワークの安全性は盛り込みたい所ですね。

具体例の盛り込み方についての質問

(編集部注)
この度、本記事を熟読してくださった読者の方より、どのような基準に基づき本文中の具体例を取捨選択すれば良いかご質問をいただきましたため、追記します。なお、追記分は平井(塾長)ではなく、英語の担当講師(おかべえ先生)によるものですのでご了承ください。
いただいたご質問は以下のものとなります。

「(本問では例外的に)具体例を解答に含める」理由は分かったのですが、「同一内容の具体例が複数個所ある場合、どちらを解答に採用すべき」でしょうか。具体的には、
 第6段落のBuehler says, could end up guiding structural engineers. For example, earthquake-resistant buildings(以下略)の部分で、解答に含める具体例の採用候補として、より抽象的なstructural engineersと、さらに具体化したearthquake-resistant buildingsの2か所があると思うのですが、どちらを選択すべきなのでしょうか。
 同様に、第7段落の具体例では、より抽象的なnetworked systemsと、さらに具体化したコロン以下(日本語でまとめると「通信網の安全性向上」等になると思います)と、どちらを採用すべきでしょうか。模範解答間でも方針が割れているようなので、解説して頂けるととても有難いです。

(回答)第6段落の具体例

このご質問の「要旨」を申し上げるなら、「要約作成における具体例の取捨選択方法を教えてください」となりましょう。なお、「要約」「要旨」「趣旨」の違いについては、以下の記事も併せて御一読いただければ幸いです。

英語1Aで問われる「要約」「要旨」「趣旨」「大意」などは、どう違うのか?

その上で、お手元に2013年の東大1Aの問題文をご用意の上、以下の回答を御一読いただけたらと思います。

① 「第6段落におけるstructural engineersを答案に盛り込むべきか。earthquake-resistant buildingを盛り込むべきか。より抽象的なものを選ぶべきなのか」につきまして
結論から申し上げると、いずれも間違いです。

「抽象的なもの」を機械的に選択するというよりは、本文全体を通して筆者が問いかけている「核心」をより説得力ある形で、かつ、より明瞭な日本語で(解答文の流れを崩さぬ形で)説明するには、どの例を採用した方が良いかという視点が大切なのです。

上でご紹介したリンクでもご案内した通り、東京大学が求める「要約」とは、「最も重要な核心部分を(要旨)を意識しつつ、具体例や反対意見も適宜織り交ぜ、本文を読んだことのない人にもエッセンスが伝わるように留意して論ぜよ」を意味すると筆者は考えています。

こうした観点に照らした時、もちろん、雑多な具体例からエッセンスを抽出する、いわば最大公約数を求める作業が高度に求められるわけですが、それは決して抽象的な単語だけを拾い集めることを意味するわけではありません。70〜80字の解答づくりに際し、最も外せないポイント(つまり、「要旨」)を書いた上で、より説得力を持たせるために具体例を添えることが目的なのですから。

優秀な生徒答案とコメント

ここで、敬天塾の生徒優秀答案を幾つかご紹介いたしますのでご覧ください。

(第一案)
強靭なクモ糸の原理は状況に応じて自在かつ柔軟に強度を変える複雑な反応で、被害を局所化し、全体の構造を維持することにある。この原理は構造工学やネットに応用できる。

(第二案)
クモの巣は複雑な構造を持つことで、一部分が受けた損傷を最小限に抑え全 体の機能を維持する。この仕組みは耐震建築やネットワークの分野で実用的に応用させることができる。

(第三案)
クモの巣は負荷に対して柔軟で、破損しても欠陥は局所的なものに留まり、 全体的な構造は維持される。この仕組みが人間の建築物だけでなくネットワークにも活用されている。

各答案とも工夫を凝らしていることがわかります。単語の羅列というわけではありません。

●guiding structural engineers (構造技術者に示唆を与えうる)
●earthquake-resistant buildings (耐震構造建築物)

という本文の直訳をそのまま答案に書いているものはありませんね。
両者から「さらに」エッセンスを抽出させ、建築工学・耐震建築・構造工学・構造設計と上手く言い換えています。限られた制限字数の中で、ピシッと相手に伝わるように、書かれている具体例をも「さらに」言い換え答案づくりに利用する「日本語能力」が問われてもいるのです。

オープン授業【東大英語 第1問A 英文要約】で詳しく説明していますが、
「要するに何が言いたいのか」を常に自問自答するクセを身につけていただきたいです。そして、日本語能力の語彙力や文法力も増強することが遠回りに見えて、実は東大の文系科目制覇の要でもあります。だからこそ、添削指導が有効なのですね!

答案作成時の具体例盛り込みまでの思考プロセス

もう少し具体的に申し上げましょう。上記の一覧でご紹介した生徒答案の第一案は

(オリジナル)
強靭なクモ糸の原理は状況に応じて自在かつ柔軟に強度を変える複雑な反応で、被害を局所化し、全体の構造を維持することにある。この原理は構造工学やネットに応用できる。(ジャスト80字)

でした。ここに、「機械的に」抽象度の高いguiding structural engineersを訳出したものを入れるとどうなるか試してみましょう!

(いじってみた案A)
強靭なクモ糸の原理は状況に応じて自在かつ柔軟に強度を変える複雑な反応で、被害を局所化し、全体の構造を維持することにある。この原理は構造技術者に示唆を与えうる。

うーん、いきなり「構造技術者」と言われても、本文を読んだことのない人からすると、なぜ技術者の話がいきなり出てくるのかという話になりますね。さらには、第7段落の具体例を盛り込むことができなくなってしまいました・・・

ここで、一部の受験生は文章前半部を削ろうと試みる人も出てきます。たとえば、

(いじってみた案B)
強靭なクモ糸の原理は被害を局所化することができるものであり、構造技術者に示唆を与え、ワールドワイドウェブにおける通信網の安全性向上にも役立つ。

うーん、具体例はたくさん盛り込まれていますが、元々の案と比べ、本質的な部分(「要旨」)が薄っぺらく、単なる英文和訳をしただけの答案に思えます。相対評価上ではB〜C評価になるのではないでしょうか。

なぜかというと、最も重要な核心部分を際立たせるために(こちらが「主」)、具体例を盛り込むべきところ(こちらが「従」)、案Bでは、主従関係が逆転してしまっているようにも思えます。

(回答)第6段落の具体例

② 「第7段落の具体例では、より抽象的なnetworked systemsと、さらに具体化したコロン以下(日本語でまとめると「通信網の安全性向上」等になると思います)と、どちらを採用すべきでしょうか。」につきまして

こちらのご質問を拝読した時に、質問者さまは無意識に具体例群から「エッセンス」を抽出できているではないか!と思いました。この一言で御回答を終えても良いくらいです。

第7段落では
the design of networked systems : a computer experiencing a virus attack could shut down instantly, before its problems spread. So the World Wide Web may someday grow more secure thanks to lessons learned from the spidery construction that inspired its name.

とあるわけですが、これを全文訳して答案に盛りこもうものなら、すぐに80字の字数上限を超えてしまいます。それは、もはや英文要約ではなく、4B英文和訳となってしまいますから、大問を独立させている意味がなくなってしまいます。

この具体例ゾーンから、「結局、何が言いたいの?」と自問自答した時、質問者さまが仰る「通信網の安全性向上」とエッセンス抽出できるわけであり、具体的な単語を書いたらダメ、抽象的な単語を盛り込めば良い、という紋切り型のテクニックで何とかなる問題を日本最高峰の東京大学が 出題するわけがないのです。

予備校各社の解答例が正解だとは考えておりませんが、少なくとも、主たる答案骨格があり、それを補強する形で具体例を盛り込めているかという視点で答案比較をしていただけたら、学びも大きいことでしょう。

以上、疑問点の氷解に繋がれば幸いです。

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