2024年東大英語(第2問A 自由英作文)入試問題の解答(答案例)・解説

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   以下の主張のいずれかを選び,その主張に対するあなたの考えを,理由を添えて,60〜80語の英語で述べよ。     

「紙は人類の最も偉大な発明の一つである」

「自転車は人類の最も偉大な発明の一つである」

 東京大学2024年

総括

2024年度の東京大学英語2A自由英作文では、記憶の限りで東大英語史上初の選択式の問題が出題されました。
英作文のトピック(テーマ)を受験生に選ばせるスタイルは、一橋大学や慶應経済で長らく採られてきましたが、まさか東京大学でこのような出題形式になるとは衝撃でした。
もっとも、東大英作文はここ最近、偶数年が鬼門となっていました。
2020年には「言葉が人を操るのか、人が言葉を操るのか」という哲学的なお題が出され、
2022年には「芸術は社会の役に立つべきか」という、これまた馴染みの薄い問題が出題されました。
こうした状況に鑑みて、2024年にもドデカイ何かがやってくると塾生には注意喚起をし続けてきましたが、まさかこのような形になるとは驚きです。

2Bでクオータ制の話が登場しましたので、幅広い選択肢を与えることの意義を第2問を通して訴えたかったのかもしれませんし、もしかすると2020と2022の自由英作文では白紙答案だらけだったと聞きますから、これだと受験生の能力差を正確に測れなくなることを懸念して、敢えて高校受験でも出されるような身近なテーマを2題択一構成にしてきたのかなとも思いました。

発明がらみでは2001年の2Bで「20世紀における最も偉大な発明は何か」という空所補充形式の英作文が出題されたことがあります。
20世紀に限定されている点が2024年と異なりますが、過去問探究の際、周辺知識を固めた受験生にとってはサービス問題だったとも言えましょう。

その他、偉大な発明について問うた問題は、2018年の東北大、2017年の茨城大学教育、2016年の中央大学商学部金融学科などでも問われています。
ですが、「紙」と「自転車」に限定した問題は意外に少ない印象です。

ちなみに、敬天塾の生徒では、「自転車」を選んだ人が多かったようです。
理由は、授業内演習で自転車関連の英作文を扱ったことに加え、映像授業で配布しているTOEFL-TOPICの36番に類題が載っていたため、それらを用いれば2分程度で書き上げることができたのが主な理由です。
起案内容については後掲いたしますので、ぜひ学習の一助になさってください。

なお、来年以降も2題構成の形式が続くかは未知数です。
東大は過去にも他の大問ではありますが1回ぽっきりで取りやめることがあったためです。
今年の入試では世界史大論述が約30年ぶりに消えたことも話題になりました。
急な傾向変化はいつ起きてもおかしくはないと心の準備をした上で、受験に臨むようにしてください。

総括の最後にちょっとしたアドバイスをいたします。
今年度の問題は、わりかし書くネタが思いつきやすかったと思います。
ですが、スピーディーにアイディアが思い浮かぶことと、確実に点数が取れることは同義ではありません
小難しい表現を用いて語法やスペルのミスを犯したり、素晴らしい論理構成を考えようとするあまり他の大問に時間を回せなかったり、あれもこれも書きたいと欲するあまり問いに「正確に」答えることを忘れたりと、解きやすい問題が出されたからと言って必ずしも良いこと尽くしではないのです。
TOEFLのライティングや秋田国際教養大学の自由英作文入試のように300words以上の英文を書くわけではありません。
あくまで60〜80語で端的にお題に答えて点数を確実に奪取することが勝者の戦略です。
昨年度の東大英語105点取得者の話では、東大英作文は単なる文法問題だと考えているとのこと。

つまり、凝った内容を書く創作コンクールではなく、あくまで、文法ミスのないようシンプルかつ無難に問いに答えさえすれば良いという思考です。
また、111点合格者の方が言うには、自分なりの論証ブロック(あるお題に対して、自分がベストだと考える英語答案を事前に作りテンプレ化したもの)を数十本以上作成した上で、入試ではそれらのストックから使えそうなものを援用して問題に対処していたとのこと。
もちろん、人それぞれに合うやり方はありますので、結局は個々人で模索しなければいけないところではあるのですが、共通して言えることは、小難しい表現や複雑な論理構成を用いてはいないということです。
書きたいことより、確実に点数が取れることを書く「妥協」も、東大2A自由英作文では求められます。
その他、英作文において注意すべき点については、「英作文7つの大罪」と題する記事でも述べているところですので、併せてご参照いただけると幸いです。

英作文における七つの大罪

東大自由英作文出題トピックリスト(テーマ一覧)1995年~2024年30年分

それでは、ここで、過去に東京大学で出題された自由英作文リストをご覧いただくとしましょう。

このように一覧化すると、東京大学が似たようなテーマを繰り返し出題していることに気付かされますね。
特に、2024年度第2問Aは、2001年度第2問Bと酷似した問題だとも言えましょう。
過去問探究を通じて、フレーズやネタストックに努めた受験生であれば瞬殺できたとも言えます。
東大英作文は、事前準備の「差」が、点数の「差」に繋がるのだと今年度も証明されました。

ただ、2001年度に出題された時よりは、解答の方向性に個性は生まれにくくなっているかもしれません。
2001年2Bでは、20世紀に限定して偉大な発明を答えさせていました。
それに対し、2024年2Aでは、「紙」または「自転車」に限定して論じさせています。
受験生の中には2023年2Aでストックした内容を元に、地球環境にやさしい自動運転車や電気自動車が世界的に普及するなか、最もエコなのは自転車であり、これから益々自転車の存在価値は高まり、より一層、光り輝く偉大な発明となるだろう・・といった具合に強引に論をまとめた受験生もいたようです。
ただ、概して「紙」を選んだ受験生が多かったようにも思われます。
どちらで書いても問題ありませんが、注意せねばならないことがあります。
それは、問われているお題に答えているかという視点です。

再現答案の中には、紙の「辞書」のメリットやデメリットを延々と論じたものや、二酸化炭素による大気汚染の弊害についてダラダラと書いたもの、通勤時間を節約する意義についてばかり言及したものなども散見されました。
ですが、問われていることは、「紙」なり「自転車」なりが

  • 「人類の最も偉大な発明の一つ」という主張に対するあなたの考え
  • その理由

の2点です。
それでは実際に、受験生が試験会場でどのような答案構成を考えたのか示すとしましょう。

受験生の答案骨格比較〜紙バージョン〜

(Aさん)

紙のおかげで、歴史や優れた研究や発明を後世に伝えることが出来、人類は比類ない発展を遂げることができました。もしも、この世の中に紙がなかったなら、東京大学で優れた学問を今日のように学ぶこともできず、学びたいことを学べない事態にも陥っていたことでしょう。

→ いや〜、実に素晴らしい論理構成です。
特に第1文については、きっちりお題にも答えられており、サクッと英訳できる内容でもあるので、時間節約にも繋がったことでしょう。

(Bさん)

紙の辞書が私は好きです。電子辞書と違って、電源を気にせず世界中のどこででも使えるのが最大の特徴です。紙の辞書があるおかげで、私は語学を学ぶのが好きになりました。紙の上で計算するのも好きです。私達にとって偉大な学習ツールであることに間違いはありません。

→う〜ん、いろいろと方向性を誤ってしまっています。
「紙の辞書 vs 電子辞書」の持ちネタを使おうと思ったのでしょうが、この書き方だと辞書にだけフォーカスがあてられていますので、「紙そのもの」が偉大な発明であるということにストレートに答えられていません。
また、「人類」にとって偉大な発明かどうかというマクロのレベルが問われているのに、受験生「本人」にとっての便利なツールというミクロのレベルに話がすり替わっています。

 

(編集部注)(Cさん)~(Hさん)の6名分はページでは省略しております。映像授業【東大英語 第2問A 自由英作文】に入れております。

 

いかがでしたか。簡単なお題に思えて、意外にトンチンカンなことを書いてしまう受験生が多くいました
どの教科でもそうですが、難問では差がつきません。
簡単に思える問題の時ほど、得点差が大きくなります。
取れる問題を確実に取りに行くことが東大合格の必須条件だということを強くお伝えしたいと思います。
それでは、引き続き、自転車バージョンをご紹介するとしましょう。

受験生の答案骨格比較〜自転車バージョン〜

(Iさん)

私は小さい頃から自転車が好きです。気楽にどこへでも行けるからです。風を感じながら、全国をサイクリングするのが何よりもの生きがいです。自転車は環境にもやさしく、二酸化炭素を排出しません。

→おそらく、こうした答案は出てくるだろうと思っていました。
この論理構成では、受験生本人が自転車を好む理由を説明しているに過ぎません。
問われているのは、「人類」にとって「最も偉大な発明の一つ」であるかどうかです。
この点、第3文をもう少し膨らませられれば、多少はお題に答えられたかもしれませんが、今のままでは最悪0点です。

(Jさん)

二酸化炭素による地球温暖化が深刻化している昨今、人々の環境意識は世界的に高まっている。欧米では、自転車レーンが設置され、自転車の価値が再認識されている。安価で誰もが気楽に利用でき、未曾有の地球温暖化の解決手段にもなっている自転車は、人類にとって欠かすことのできない最も偉大な発明の一つであることに間違いはない。

→第1文だけだと、お題に答えられていないように一瞬思えましたが、第2文以降で設問条件を満たそうとしていることをうかがい知れましたのでホッとしました。
この構成なら、点数はいただけると思います。

(Kさん)

自転車は、人々の移動速度を早め、個人の経済活動の裾野を広げた。老若男女や社会的身分を問わずに、特別なスキルや設備を必要とせずに誰もが手軽に乗れる点、人類の発展に大きく寄与した偉大な発明の一つだと言えます。

→面白い切り口です。
自転車から経済活動の話や身分の話を瞬時に思いつけるのは、教養力の賜物でしょうか。
お題にもきちんと答えらえていると思います。

 

いかがでしたか。「紙」を選んだ受験生が多かったこともあり、自転車に関する答案サンプルは少なめになっています。
高校受験で出されてもおかしくないような簡単なお題に思えて、意外にトンチンカンなことを書いてしまう受験生が多くいましたね。
どの教科でもそうですが、難問では差がつきません。
簡単に思える問題の時ほど、得点差が大きくなります。
取れる問題を確実に取りに行くことが東大合格の必須条件だということを強くお伝えしたいと思います。

 

なお、塾生に多読用教材としてご案内しているアメリカのDK出版社の100シリーズがあります。
そのうち、発明について扱った『100 inventions that made history』を読んだ生徒にとっては、今年の問題は超ラッキー問題だったようです。
よろしければ、復習の一助になさってください。

https://www.dk.com/us/book/9781465416704-100-inventions-that-made-history/

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映像授業【東大英語 第2問A 自由英作文】

2024年2A関連だと、以下の内容が入っています。

受験生の答案骨格比較
東大2023自由英作文で役立つフレーズ集
【自動運転車関連の英語表現】
【電気自動車関連の英語表現】
【自転車通勤関連の英語表現】
【chatGPTに聞いてみた!〜電気自動車編〜】
【chatGPTに聞いてみた!〜自動運転車編〜】
【chatGPTに聞いてみた!〜自転車通勤編〜】
東大2023自由英作文の類題
2023年度入試で出題された良質な自由英作文問題リスト一部抜粋
電気自動車・自動運転車・自転車通勤関連のニュース記事のリンク

映像授業【東大英語 第2問A 自由英作文】
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