2021年 東大数学 文系第2問 解説(場合の数)

東大文系数学においての、場合の数・確率の歴史ダイジェスト

東大文系では、2017年までほぼ毎年、確率の問題が出題されていました。
2018年では、場合の数・確率からの出題はなく、2019年以降は場合の数からのみ出題されています。

つまり、ここ数年で、明らかに確率から場合の数に、出題傾向がシフトチェンジしたと分析することができます。
(念のため付記しておきますが、だからといって次の入試で場合の数が出題されると予想しているわけではありません。)

また、確率が出題されていた2017年までを俯瞰すると、
2015年まではいわゆる「確率漸化式」の問題がほぼ毎年出題されていましたが、
2016年と2017年では、「確率漸化式」ではない、確率が出題されました。

以上をまとめると、以下のようにまとめることができます。

近年の場合の数・確率の傾向

では、確率漸化式以降の問題に、何かしらの共通点や傾向があるのかというと、(大雑把に言って)あります。

・場合分けが出る
・(鮮やかに解くというより)愚直に数え上げる問題が出る
・難易度はだんだん上がっている

といった感じでしょうか。
詳しく知りたい方は、以下のリンク先をご覧くださいませ。
2016年第2問の解説記事
2017年第3問の解説記事
2019年第3問の解説記事
2020年第2問の解説記事

要するに、「見た瞬間パッと思いついて解く」というような問題ではなく、知らない設定の問題が登場して丁寧に読み込み手を動かしながらカラクリを解き明かす問題が出るということです。
ある意味、数学の王道といえるかもしれませんが、受験生にとっての負担は大きい。
25分平均で問題を解き、答案を作成するとなると、時間は非常に短く感じるでしょう。

難易度も、ドンドン高くなってきているため、対策が難しく、得点も取りづらくなっていると思います。

では、以上を踏まえて、2021年第2問を見ていきましょう。

2021年 東大数学 文系第2問 解説(場合の数)

 

 

やはり、知らない設定の問題が登場しています。(まあ、場合の数・確率で知っている設定が出ること自体が少ないですが)
仕方ないので、手探りで法則を探っていくしかありません。

やることとしては、一般的な文字を具体的で小さい数に固定して考える、というのが定石。
今回の問題でいうと、Nが一般化している文字なので、Nに具体的な値を代入します。問題文からN≧5とあるので、N=5を代入して考えてみましょう。

「1は必ず一番左におく」という条件を忘れやすいので、気を付けましょう。
(実際、再現答案にて忘れている答案が散見されました。)

書いてみると、5通りあります。
5通りあること自体にも意味がありますが、ここでは
・なぜ5通りになるのか
・5通りの中でグループ分けできるか(のちの場合分けの方法のヒントになる)
・N=6にするとして、N=5の場合が利用できるか
などが大切な視点でしょう。
つまり、「一般化するためのヒントを探るためにN=5の場合を検討しているのだ」というのを忘れずにいることです。

さて、5通りを書くと、
(3,5,7,9)
(3,5,7,10)
(3,5,8,10)
(3,6,8,10)
(4,6,8,10)
となります。
※1は必ず一番左で、左から2番目は必ず2になるため、簡単のため省略しています。

すると、この5つは、「奇数から偶数に切り替わるポイント」によって、5通りに分かれていることが分かります。
例えば、(3,5,8,10)の組は、5から8になるところに「奇数から偶数に切り替わるポイント」が存在しています。

(3,5,7,9)は、全て奇数なわけですが、これは「奇数から偶数に切り替わるポイント」がなかったと捉えてもよいし、右に追いやられてしまったととらえてもよいでしょう。

このように、左の方は奇数が並んでいて、右の方は偶数が並ぶ、という法則に気づけば、あとはこれを、一般化して答案に書くのが、(1)の問題です。
ただ、これを記述するのがやや難しいでしょう。
論理的に正しく、正確な答えが導けているならば、答案として「アリ」でしょうが、それでもなかなか難しいかもしれません。
さっきから登場している「奇数から偶数に切り替わるポイント」を「k番目の奇数」か何かでおいて、kを動かすというのが一般的な思考のように思いますが、別解も含めて手書きで示しておいたので、どうぞご覧ください。

 

(2) さあ、どう攻める!?

さて本丸の(2)。
(1)が2連続する場所を考えるのに対して、(2)ではN-2連続する部分を考えます。

冒頭にも書いた通り、ここ最近の東大では鮮やかな解法で解かせるわけではなく、愚直に場合分けを求めてきます。
よくテクニックとして「”少なくとも”があったら余事象を使え」とありますが、余事象を使う路線を検討しても、あまりスッキリいかない。
ここは、過去問の傾向にも習って、面倒でも正面から場合分けをするのが妥当な解法だと考えましょう。

ここで注意するのが、「N-2連続する部分を含む」というのは、「ちょうど」ではないということ。N-1連続やN連続でも、条件を満たします。これをヒントに「ちょうど」連続する数で場合分けをするのが、シンプルで発想しやすいでしょうか。

(ⅰ)ちょうどN連続する
(ⅱ)ちょうどN-1連続する
(ⅲ)ちょうどN-2連続する

の3つに場合分けをすれば、排反に分けられます。

この方針で丁寧に解いたのが以下の解法1です。
(かなり、補足の図などを書いて、場合の数を数えやすくしてあると思います。)

(2)別解法:連続する部分の最小値で場合分け

別解法も見つけたので、書きました。
こちらは、「連続する部分の最小値」で場合分けするというもの。「ちょうど」ではないため、連続する部分は「N-2連続以上している」としています。

ただし、このような場合分けをすることは稀なので、受験生が試験会場で思いつけるかどうかというと、怪しいと思います。
解法を盗むのは当然としても、1手目に考える解法ではないと思いますので、あくまで選択肢の1つとして味わってください。

まとめ:難問。(1)を確実に取ろう

ここ数年の東大文系では、場合の数・確率の問題が難しく、高得点を取るのが非常に厳しいと思います。
再現答案なども見ましたが、良くて(1)が得点できている答案ばかりで、0~5点ばかりでした。

確かに、過去問を解いていると、愚直に場合分けする問題が多いというのは気づけますが、過度な緊張状態にある試験会場で、正解にたどり着く場合分けの方針を思いつき、数えミスと計算ミスをせずに正解するというのは、非常に厳しいと思います。

「どこまで攻めるか」という見極めが大事であり、この問題に時間をたくさん投下するならば、相当な覚悟をするべきでしょう。

一方で、練習問題としては非常に良い問題といえます。
場合分けの方針の検討や丁寧な数え上げの訓練としては良問だと思います。非受験学年の生徒さんは、解いたうえで時間をかけて分析して、力を蓄えると良いと思います。

敬天塾作成の解説

2021(2)文数 解説

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