2024年(令和6年)東大地理を当日解いたので、所感を書いてみた。

敬天塾の塾長と講師が東京大学の二次試験当日(2024年の2月25日・26日)に入試問題を解いて、速報で所感を記した記事です。他の科目については、こちらのページにリンクがございます。(2024年の解答・解説なども、でき次第、こちらのページにリンクを付けます。)
 

【東大地理総論】

【東大地理総論】をひらく

私達は、小学生の頃から地理を学校で学んできました。
その意味で身近な科目の一つだと言えます。
ですが、高校地理という科目は、なぜかマイナーな存在となっています。
日本史や世界史に比べて参考書の数も少なく、教員の絶対数も少ないのです。
(こちらの記事もご参照ください。https://exam-strategy.jp/archives/4130)

ましてや、これが東大地理ともなると、東大に特化した授業や参考書は皆無に等しくなり、多くの受験生が対策に苦慮します。
それでも、地理を選んだのには理由があるはずです。

人にすすめられたから、
世界史と日本史を選ぶと暗記量が尋常ではなくなるから、
早くにマスターできると思ったから、
世界史との繋がりが良いと思ったから、
中学受験の頃から地理や日本史に触れていたこともあり親近感を持てたから、
地理が大好きだから等々、
人それぞれ様々な地理選択の理由があると思います。

せっかく選んでくださったわけですから、東大地理の醍醐味を少しでも知っていただきたい
そんな思いから敬天塾ではバラエティ豊かな映像授業や予想問題集、さらには無料でご覧いただける過去問解説記事をご提供しております。
ぜひ、東大地理の楽しさに目覚めてください!

さて、せっかくですから、授業でお伝えしている東大地理制覇の極意を幾つかご紹介するとしましょう。

① 過去問は最強かつ最高のバイブル

これは、全教科的に言えることですが、東大対策に資する最強かつ最高のバイブルは「過去問」です。
既に出されたことは二度と問われないのではないか、と仰る方が多くいらっしゃりますが、それはナンセンスです。
敬天塾の東大地理分析シートをご覧いただければわかるように、東大は重要なテーマをあの手この手と形を変えて何度も何度も問うてきています
時間制約の厳しい東大社会にあって、こうした典型問題を如何にスピーディに仕上げられるかが総合得点アップの秘訣だと言えましょう。

(敬天塾オリジナル東大地理分析シート)

② 東大現代文+東大数学=東大地理?

東大地理は1行や2行で要点をまとめるチカラが求められています。
これは、東大現代文や東大英語1Aで求められているスキルに他なりません。
問われていることを端的に答えられるチカラ、換言するなら、国語力が地理でも問われているのです。

さらには、東大地理は、ただ単に地名や地図記号やらを大量に丸暗記すれば解けるわけではありません。
基礎的な知識を組み合わせて応用できるチカラが問われているのです。

たとえば、2022年度入試において、ブルーベリーが東京都で盛んに生産されている理由を答えさせた問題が出題されました。
こんな知識は、データブックを隈なく探しても載っていません。
では、東大は誰も知らないマニアックな知識をわざと出しているのかというと、そんなことはありません。

                   東京には多くの人口が集中している=東京は大消費地(買ってくれる人が多い)

ということから合理的に推論していけば解答の方向性が見えてくるはずです。
その他にも、観光農園が流行っている、ブルーベリーは収穫後に日持ちがしない、健康志向の人にとってブルーベリーは人気などの知識があっても解けたと思いますが、一番大事なのは「なぜ、東京都なのか」という視点です。
少ない原理・原則を駆使して、様々な応用問題を解いていく科目というと、「数学」を連想すると思います。
実は、東大地理もこうした側面を強く持っています。
後述する③でも申し上げますが、地理を丸暗記科目と捉えている人にとって、東大地理は鬼門となるでしょうし、
物事を突き詰めて考える人にとっては、こんなにも楽しい科目はないと思われるでしょう。

③ 地理はマルアンキの科目ではない

「多くの農産物ランキングや地名を大量に丸暗記する科目=地理」と考えている人が非常に多い印象です。
昨今、地理総合や地理探究といった科目が新設され、中学高校での授業も変わりつつあるとは言われていますが、それでもなおのこと、単なる暗記科目として地理を位置づけている先生や生徒が多いのではないでしょうか。

かつて、私もそのように考えていた時期があったのですが、東大地理の過去問に触れてから考えが一変しました。
もちろん、東大地理とて、暗記すべき事柄はあります。
ですが、背景や理屈抜きに漫然とマルアンキを試みると、際限のない暗記量となってしまいます。
なぜなら、東大地理で問われている事柄は、世界史と日本史以外全部と言っても過言ではないくらい広範に失するからです。
きちんと論理的に思考のレシピを脳内で構築しませんと、見たことがない問題を前にした時、即応できなくなってしまいます。
東大地理の作成教授陣は意図的にこうした問題をつくっているのです。
ここが東大地理の面白さでもあり、難しさでもあります

④ 日本のことを真剣に考える姿勢を持とう!

東京大学には地震研究所や大気海洋研究所などが併設されています。
日本社会の健全な発展や日本国民の安全を願って、日夜研究をし続けている機関、それが東京大学なのです。
そうしたこともあってか、東大地理では日本をテーマにした問題が数多く出題されています。
市販の大学受験参考書では日本に関する記述がオマケ程度しかなく、中学受験向けの参考書の方が情報量は圧倒的に多い印象です。

ただ、近年、地理総合や地理探究という新たな科目が創設されたことを機に、日本の現状や未来に絡むテーマを学ぶ機会が増えてきました。
未だに市販参考書はこうした新たな潮流に対応できていないところではありますので、東大過去問+教科書+資料集でしっかりと日本の「イマ」に目を向けるようにしましょう。
なお、どの出版社の教科書が東大対策に資するのかなどをまとめた映像授業もございますので、併せてご参照ください。

⑤ 共通テストは使えるぞ!

10年以上前のセンター過去問を見ておりますと、単なる知識を問うた実につまらない問題が多く出されていました。
ですが、共通テストや、共通テスト導入の少し前からのセンター過去問では、与えられた統計や地図などを合理的に分析した上で正解を導くという、東大地理のような思考プロセスを踏まないと正解を紡ぎ出せない設問が格段に増えました。
これは、東大受験生にとっては、実にありがたいことでもあります。
東大対策の方向性とのズレが小さくなったので、共通テストのためだけに●●をするという負担が減ったからです。

なお、分析型の問題が増えたからと言って、基本事項の暗記を怠って良いというわけではありません
共通テスト地理でも東大地理でも、最低限知っておかなければならない事柄はあります。

地理は数学と似ていると上で申し上げましたが、数学も公式理解や基本定石の習得が必要ですよね。
それと同じです。

⑥ 東大地理の特殊性

地理を二次試験で出す大学は、あまり多くはありません。
北海道大学、新潟大学、筑波大学、一橋大学、東京都立大学、東京学芸大学、名古屋大学、大阪大学、京都大学、九州大学など数えられるくらいです。
これらの大学の過去問の中にも、東大対策に使えるものが多くありますが、東大地理とは問われ方がまるで違います

たとえば、東大地理で満点を取ったとしても、一橋地理で0点を取ることはありえます。
全く別の科目だと思えるくらい、出題切り口が異なるのです。
これは文系教科全般に言えることかもしれません。

物理や化学なら、多少のクセはあれど、東大入試で満点を取れるなら他大学の問題でも高得点は取れるのですが、国語や地歴など文系教科については、サッカーとテニスくらい違う問題が出されることがあります。
東大地理の特殊性というより東大文系の特殊性と言っても良いかもしれません。
東大は無理そうだから一橋にしようかな〜なんて思っていると、痛い目に遭うのはこのためです。
以上のことからも、東大対策には過去問が最強かつ最高のバイブルなのです。

⑦ 時間配分が「命」

東大社会の試験時間は150分ですが、地理だけに150分まるまるかけられるわけではありません。
世界史OR日本史のことも考えねばならないわけです。
地理は分量が多いため、80〜90分はかかってしまう受験生が多い印象です。
地理が満点でも、もう1教科が0点ではシャレになりません。
「地理60+歴史0=60」よりも、「地理45+歴史45=90」の方が良いに決まっています。
このあたりの時間配分戦略は学力とは別の要素です。
捨て問の見極めや、他の大問や科目に移る勇気が東大地歴制覇のポイントになってきます。
また、スピードが重要である以上、解答の要点を素早くまとめる訓練も必須です。
地理を単なる丸暗記科目と捉えている人は、こうした訓練を怠っている印象です。

以上、ざっくりと東大地理の特徴をお伝えして参りましたが、いかがでしたでしょうか。
ここで直近5年分の出題内容をご紹介いたします。
2024年度入試に臨んだ東大受験生が事前に目にしたであろう問題です。

全体の考察

難易度  標準(平年並み)

本年は、1A・2A・3Bで見慣れぬテーマの問題が出され、だいぶ苦戦された受験生も多かったのではないでしょうか。
ですが、こうした問題の時ほど、基礎に戻る勇気が大事なのです。受験生に問える知識には限りがあります。東大教授は、そうした制約のなかで「やりくり」して設問をつくっています。答えを見れば誰だってわかるような内容のことを、うま〜く化粧して隠そうとするわけです。そうした粉飾技術がものすごい高いのですね(笑)。

正直、このスキルは予備校の東大模試ではなかなか再現できません。それもそのはず、大学入試問題は、大学の威信をかけて、最高峰の精鋭たちが1年かけてつくる問題です。
しかも、変な問題をつくろうものなら、何十年先までずっと批判され続けるわけです。ですが、模試なんていうのは、数年もすれば入手も難しくなり、皆が気にも留めなくなるわけですね。作問に際しての重圧がまるで違います。

東大対策における最高かつ最強のバイブルは過去問であると映像授業の中でも繰り返し申し上げてきましたが、本年の問題でも、その傾向は強くうかがいしれます。ぜひ、過去問を伝家の宝刀のようにとっておくのではなく、思考訓練の教材として余すとこなく活用していただきたいと切に願っております。

第一問

設問A 

難易度  標準

ここ数年、東大地理では1Aに見慣れない図表や用語を載せ、受験生を動揺させようとする傾向にあります。
2022年度の1Aではコロナを意識してか「人獣共通感染症」について問い、2023年度の1Aでは「人新世」について問うてきました。
そして、2024年度入試では「乳糖耐性者の世界的分布」という見慣れないテーマが出題されました。
乳糖耐性について、少し詳しく学ばれたい方は、一般社団法人Jミルクさんのレポートがなかなか興味深いのでご覧ください。
https://m-alliance.j-milk.jp/jmilk-news/2019news/detail/huh1j4000000be19-att/a1548033690254.pdf

このような見慣れないテーマが出されると、途端に思考放棄してしまう受験生が例年後を絶ちませんが、非常に「もったいない」ことです。
見慣れぬテーマが出された時ほどチャンスだと思わねばなりません。
リード文や設問文、あるいは指定語句の中にきっとヒントを散りばめてくださっているはずです。

たとえば、設問(2)では西アフリカ・アラビア半島・南アジアでなぜ乳糖耐性者の割合が高いのか問われています。
指定語句は、「適応」「気候」「飲用」の3つです。このうち、圧倒的に珍しい語句は「飲用」ですね。目立つ語句はヒントになることが多いです。

普通に考えると「乳を飲用にしていた」となりますが、ここで終わっていけません。地理では他の要因と絡める姿勢が大事です。
特に今回は指定語句に「気候」がありますから、「自然条件」を思い出します。
ちなみに、自然条件といったら、気温、降雨、地形、土壌、植生とすぐに思い出せるようにしましょう。

その上で問われている3地域の気候はどうだったのか思い出してみると、共通点は「少雨」。
ということで、ただ「乳を飲用にしていた」とするだけでなく、「少雨のため乳を飲用にしていた」と答案に厚みが出るのです。
東大地理では使える情報は全部使う気概が大事です。

設問(3)は、別の設問ですから、別角度から攻める。円グラフにも「乳製品」とありますし、(2)でも「飲用」とありますから、飲用以外の手段として発酵の話に気付ければ早かったと思います。

設問(4)で手こずった方がいらっしゃるやもしれませんが、よくわからなくなったら、やはり本文やリード文の熟読。すると、むしろサービス問題に見えてきます。
乳が食料資源として「積極的に利用されておらず」とありますよね。

 
そこで、東南アジアの特徴を考えていきます。やはりここも「自然条件」から攻めてみると見えやすいです。
気温は高く、降雨が多い、地形は山がちや島嶼、大河川の川下にはデルタもありますね。土壌は場所によりますが、ラトソルがあったり、サンゴがあったりするところもあります。植生は熱帯雨林やマングローブも思い出したい。このように山手線ゲームをしてみるのが、地理の考え方です。

そして、与えられた表を見てみると、米と小麦とトウモロコシ。これは三大穀物についての表です。東南アジアで作られているのは、やはり米。
そして、注釈を見ると乳製品はアミノ酸スコアが100と書かれている(注釈がヒントになるのも、東大地理アルアルです)。米と比べてみると・・・。
おのずと答えは出るのではないでしょうか?
こうして振り返ってみると、事前知識として解答に直接使ったのは「東南アジアの主食はコメ」という小学生でも知っている知識だけです。

 

設問B

難易度 標準

メジャーな天然ガスからの出題です。
天然ガスは、石油や石炭よりも熱量が大きく、燃焼時に排出される汚染物質も比較的少ないため、環境負荷が小さな化石燃料として重要視されています。
ヨーロッパや北米では産油国からのパイプラインで天然ガスを輸送することが多いですが、日本の場合は液化天然ガス(LNG)の形で輸入されます。
ただ、ロシアのウクライナ侵攻で、ロシア産の天然ガスの購入が難しくなっているほか、天然ガスをはじめとするエネルギー価格が軒並み高騰しています。
このように安定供給という点で難がある天然ガスに依存するのではなく、やはり原子力発電に頼りべきなのではないかという声も上がっています。
なお、エネルギー価格の高騰については、資源エネルギー庁の記事もぜひご参照ください。

https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2023/html/1-2-1.html

教科書や資料集ではそれほど詳しく載っている分野ではなく、どちらかというと新聞やニュース番組を見ている人の方が親近感を覚えるテーマだったかもしれません。
ただ、ウクライナ侵攻で、天然ガスも含めたエネルギー問題は頻繁に報道されていましたし、設問(4)についてはヒントとなる図表もふんだんに挙げられていましたので、解答の方向性を見定めること自体は難しくなかったと思います。

第二問

設問A

難易度 やや難

海底と陸上の土地面積や大陸ごとの陸地面積比率などが問われました。
この手の地形問題が出ると、途端に思考を放棄してしまう受験生が多い印象です。
これは日頃の学習においても見られ、教科書や資料集の該当ページを飛ばしてしまうことがよくあります。
東大教授は、そうした受験生の動向をよくご存知ですから、定期的にこの手の問題を出してきます。
見慣れないテーマということもあって拒否反応を示した受験生がかなり多くいたと考え、難易度を「やや難」としました。

なお、敬天塾が入試直前にリリースした地理ドリルの中にも大陸ごとの差異に着目した設問がありましたので、ご案内いたします。

東大対策問題集 地理 4つセット(思考編①②、知識編①②)

その上で、個々の設問に目を向けるとしましょう。

まず、(1)ですが、これは設問文にヒントがあります。
「深海底」+「世界の経済に大きな影響を与える」ものと言えば何でしょうか。反射的に「レアメタル」などの希少資源を想起せねばなりません。教科書レベルの知識ですし、日本でも沖ノ鳥島周辺にレアメタルなどが埋まっていることは大々的に報道されていましたね。

次に、(3)ですが、(2)の客観式問題で「ア」がアジアであrことがわかれば、新期造山帯が広範囲にわたって広がっていることはすぐに気づけるはずです。というよりも、「標高が高い」という設問文のキーワードから、反射的に造山運動を想起しなければなりません。造山運動が活発なのは、どこの大陸かというと、当然、ヒマラヤなどのあるアジアだとわかります。ですので、(3)をヒントに(2)を解くことも出来たと言えましょう。使えるヒントは全て余すとこなく使い倒すのが東大地理制覇の極意です。

(4)については、質問の趣旨をうまくつかめなかった受験生がいたかもしれません。まず、「エ」がヨーロッパで、「オ」はオーストラリアであることに気づけなければ、この(4)に投じる時間は無駄になってしまいますから、(2)に自信がなければ(4)はいったん飛ばして、別の大問にスライドする勇気が大事です。
話を戻しますと、仮に、「エ」と「オ」が特定できたのなら、次に参考にすべきは設問文中の「土地利用」「土地被覆」という語句です。土地利用に関しては、オーストラリアから考えるとわかりやすいかもしれません。雨が少ない地域で人の住めるところも少ないですよね。その反面、ヨーロッパは温暖湿潤で肥沃な土壌のある地域もオーストラリアに比べれば多く、人の住める町も多くありますね。

ちなみに、「土地被覆」とは、植生や土壌など地表面の状態を示したものです。緑が豊かな土地か否かと考えるとわかりやすいかもしれません。いかがですか。このように突き詰めて考えると、それほど難しい問題ではないことに気づけるのではないでしょうか。

設問B

難易度 やや難

人口が1億を超える世界14カ国の人口変化率について問うた問題です。
テーマ自体はメジャーなのですが、1億越えの国の名前を思いつけなかった人は議論の土俵に乗ることが難しかったでしょうし、仮に国名を知っていたとしても、与えられた図表には国名がなんら明記されていませんので、「ア」から「セ」までの国がどこなのかを分析しなくてはいけない難しさはあったでしょう。
正確な知識がないとトンチンカンな答えになってしまうという意味で、難易度は高かったと思います。

逆に、設問(1)から(4)までで問われている国名さえわかれば、教科書や資料集に載っている知識だけで解きすすめることが出来た問題です。
その点では、今年の東大文系数学に似ているかもしれません。

さて、もう少し詳しく問題について見ていくとしましょう。
全体のテーマは人口変化率です。教科書や過去問探究を進めてきた受験生であれば、「一人っ子政策」「合計特殊出生率」「少子高齢化」といったキーワードは反射的に思い起こせるはずです(思い起こさなければいけません)。

(3)では中国とインドという昨年の東大入試や共通テストでも問われた地域が登場していますね。というより、マイナーな国のことなんて受験生が書けるわけがないことは東大教授だって知っていますから、必然的にメジャーな国同士を比較検討させてくると想定できます。

ちなみに、(4)は日本とアメリカについて比較させています。このように、国名で考えれば、めちゃくちゃ簡単な問題だと思えますよね。ということで、本問は実質的に、「ア」から「セ」までの国名、せめて設問で問われてている「カ」「シ」「サ」「セ」あたりの国名だけでもわかるよう全力を尽くすべきだったことが、おわかりいただけると思います。そうした意味で、わかれば天国、わからなければ地獄といえ、難易度を「やや難」としました。

第3問

設問A

難易度 標準

先程の第2問に比べると解きやすい設問が多い印象です。
ミシシッピ川というのは、共通テスト(センター試験)でもよく問われている川や都市の名前ですから、アメリカの川と問われたら真っ先に思い出さなくてはいけません。
さらには、ミシシッピ川の河口にある「ニューオーリンズ」は、ハリケーンというキーワードと共に2008年東大地理第1問のAでも書かせていますから、過去問探究をしてきた受験生にとっては「サービス問題」でした。
いくら「知識より思考」の東大でも、さすがに答えたい問題です。

設問(5)に関しては、川の果たす役割を普段の学習でしっかりと意識できていたかが重要な分水嶺になったと思われます。
東大受験生の答案を見ていますと、河川を利用した輸送という視点が欠如していることが多いように思われます。

たとえば、最近のニュースを例に挙げますと、ヨーロッパを襲った記録的な猛暑でライン川の水位が低下し、貨物船が満載の状態では航行できず物流に支障が生じたことが大々的に報道されました。
本問でも、東大側は設問文に「経済活動に与える影響」とヒントを与えてくれています。
水位低下により鉄道やトラック輸送に切り替えなければなりません。
すると、輸送コストが高まってしまいますから、穀物輸送などにもマイナスの影響を与えることになってしまうわけです。
昨年の夏にも以下のような報道がなされていました。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-10-07/RJD80PDWX2PU01

設問B

難易度 やや難

地下鉄を開業する要因について、様々な角度から分析を試みた面白い問題です。

一見すると見慣れない問題かもしれませんが、まず、設問(1)から(4)までざっと斜め読みしてみてください。
すると、「密度」「1990年代」「アジアの大都市」「地下鉄を建設する必要が生じた」「地下鉄の建設が可能になった要因」といった具合に、キーワードを拾い読みするだけでも、答案骨格を思い浮かべることができることにお気づきになられたでしょうか。

まず、設問(1)については指定語句がヒントになっていますね。東京や大阪という人口が集中する地域(人口密度の高い地域)で路面電車をちんたら走らせたところで、輸送力が十分だとは言えません。
だからこそ、地下鉄網を巡らす必要性に迫られたわけです。必要性に迫られなければ、わざわざ高い建設費をかけて地下に穴を掘って鉄道網を敷こうとはしないはずです。当たり前ですが、地上に電車を通すのと、地下鉄を通すのでは建設費が違いますからね。

次に、(2)については、シンプルに考えられたかどうかが鍵です。
地震があるからなどと深く考えすぎないようにしてください。地震が理由なら日本には地下鉄なんて作れなくなります。地下鉄を建設する必要がないということは、地下鉄以外の交通手段(輸送手段)がロサンゼルス市民にはあったということです。
となれば、自ずと自動車というワードが出てくるのではないでしょうか。

続けて、(3)ですが、これは敬天塾の映像授業で中論述ドリルを解いた方にはサービス問題だったと言えましょう。インドネシアが首都移転をする話は有名ですが、その理由の一つに深刻な大気汚染があったはずです。そのことに着想できれば、地下鉄のメリットが見えてくるのではないでしょうか。

そして、ラストの設問(4)ですが、これはカネの話だと気づいて欲しいところではあります。
経済関連の話については、社会人受験生の方が馴染み深いかもしれませんが、1990年代以降のアジアと、1980年代までのアジアは何が違うのでしょうか。経済発展の具合が大きく違ってくるはずですね。経済発展とは何かというと、要は使えるカネが増えるということです(笑)。
ただ、要因を「2つ」書けと要求してきているので、ここでつまづいた受験生は多そうです。私が受験生なら、この(4)は、要素を一つ書いて、二つ目は捨てるかもしれません。

 

最後に

上記の地理の記事は敬天塾の塾長とおかべぇ先生が執筆しています。
おかべえ先生は、東大地理で60点中59点を取得した先生です!
どなたでも受講可能な、おかべぇ先生の授業はこちら ↓

映像授業【東大地理】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)